気高い志という名の旋律

 情け容赦ない過酷な作品である。もちろん美しくもあれば楽しくもあるが、北欧の抱える問題が地理的にも社会的にも色濃く反映されている。

 私は、正直なところ十九世紀という時代そのものには興味がない。しかし、本作は十九世紀でないと成立しえない。何故なら、それは辛うじて神秘なるものに生々しい説得力が残る最後の時代だからである。

 ただ音楽を学ぶという行為のために、主人公は命がけの冒険を重ね魔法をかけられ(!)身近な人間の理不尽にさらされる。それでも彼女の志はゆるがない。高潔という、今や死滅して久しい言葉が彼女を通じて天高く掲げられる。

 必読本作。

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