読みやすさの極致ここにあり

 レビューを書くために読んだ私はしばらくの間、言葉を奪われました。

 なにこれ、すごい。読みやすいすごい。テーマもしっかりしてる。夏から秋に変わる描写がこんなにも文学的でいて嫌味なく表現できるものなの。すごい。秋だけじゃないすごいところが多すぎてまとまらない。

こんな状態になりました。書き手の皆さんはは絶対に読むべきです。

 上手くまとめて表現できないので最初に言います。完成度がものすごく高いです。

 今を捉える作者の観察力、精選された言葉と文章の運び方が合わさって、感性鋭く、今を生きる高校生の生活が描かれています。これだけでもすごい。
 けれど、凄いところはまだまだあります。季節外れに地中から出てきてしまった蝉を軸にして生まれてきた意味を考える。孤独な蝉にも意味があった。この蝉が物語によく馴染み、難しいはずのテーマを身近なものとして捉えられるようにしてくれてきます。そう。説教くささが無く、自分のこととしてストンとテーマの解が腑に落ちます。

 今の私が言語化できるこの作品の素晴らしさはこれだけです。しかし、これは作品が凄い理由の数%でしかないです。まだまだ技術が隠されています。

 どうか書き手の皆さん、読み手の皆さん、この作品の素晴らしさを紐解き、言語化してください。

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