第13話 金翼〜Golden wings〜

「最近、雪那君と水城さんって、付き合ってる雰囲気感あるよね?」


「そうそう。それに何か二人とも、一気に変わったよね」


「そう!何か鼻につくし、特に水城さんの態度ムカつく!」


「元々、目立たない人だったのが、急変してるよね?」





✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕



「下界を見て、どう思う?それでも、お前は戻りたいか?」



神様のような仙人のような謎の生態が言った。

眼鏡をかけて、顎に長い白い髭を生やし杖を手に持っている。



「それは…」


「水城悠漓は死んだ!存在しない!そして…天使の生態であった悠鬼雪那も、人間の悠鬼…雪那もな」



「………………」



《…嘘…雪那が…?》




そう思う中、話を続ける。



「悪魔の心が下界を破壊する。腐った世の中になるであろう。人を憎しみ殺し合い。不幸のドン底、真っ逆さまだ。もし…生きる事が出来ても結局、お前は死ぬ」



「………………」



「それでも構いません…!私が、もし、生きられるなら…もう一度、下界へ降ろして下さい!」



「出来ん!」



「…どうし…て…?善と悪の世の中に善は存在しないしないの?全てが悪の世の中にならない為にも私を下界へ……」



「うるさい!うるさい!うるさーい!お前は死んだんだ!生きてどうする?修行せいっ!お前は生まれ変わるのだ!」



走り去る私。



「待つんじゃ!」

「嫌です!」



ブワッ



「風…下界の道…?」




私は飛び降りようとした。




「行くなっ!駄目だっ!」




後を追う神様のような仙人のような生態が呼び止めるも私は飛び降りようとした次の瞬間




「行ってはならん!下は地獄だっ!」




ドクン…




「えっ…?」

「中途半端なまま行くと、一生戻って来れんっ!」




グイッ



ガクッ



私の体を引っ張られる。




「きゃああっ!」

「悠漓っっ!!」





ドキン…




「…えっ…?…雪…那…?」




ポロッ

涙がこぼれる。



「頑張って、こっちへ来いっ!」

「…理…だよ…力が…出ない…」

「…悠漓…悠漓っ!」

「…ありがとう…雪那…自業自得…ゴメン…」



私はゆっくりと下へ下へと降りて行くのだった。




「…悠漓…悠漓ーーっ!」

「離れろっ!!」




「………………」




次の瞬間―――――



ガシッ

俺の手を掴まれる。



ビクッ


「…ニ…イ…コ…ウ…ユ……キ…ナ……」

「うわああっ!」



悠漓に似た奴が俺に言った。




ドカッ


「彼女の幻だ。本物じゃない!」



「………………」



「彼女は自ら地獄へ堕ちた」

「…本当に…助かんねーの?」




「………………」



「なあっ!お前神様…いや……仙人…?あー、どっちでも良い!どうにかしろよ!!…それとも…あんたは…見せかけだけの…デマ野郎なの?」




「…………………」




「何?無礼者っ!愛する者の死を目にした挙げ句、何を申すっ!侮辱するとか大した者だな!」


「アイツは、死んでねーよ!」




「………………」



「俺が…心から愛した女だ!アイツも俺を愛してくれてた!悪魔と天使。水城悠漓として悠鬼雪那として、お互い愛し合っていたんだ!…なあ…何か方法あるんだろう?俺はアイツを助ける。いや…助けてーんだよっ!」



「………………」



「おい…ジジイ…起きてんのか?」



「……………」



ドカッ

俺は、軽く蹴りを入れた。



「…考え事だ…考え事。…それから…ジジイではないっ!!死に損ないがっ!!」


「クソジジイっ!テメーっ!」



ドカッ


ドスッ



「お主は、年寄りに暴力かっ!?地獄へ堕ちろっ!」



スッ


ガクッ


バランスを崩す俺。



「うわっ!」


「そこで頭を冷やしとれっ!」




俺は穴にハメられ、身動きが取れなくされた。



 去って行く神様のような仙人のような変な生態。





「おいっ!!くぉぉぉらーーっ!悪魔ジジイーーっ!テメーこそ、その腐れ切った脳みそ叩き直したらどうなんだよーーーーっ!こんな事する、神か仙人か知らん生態が何処にいんだよーーーーっ!!」





ヌッ


「ここだ!」



俺の目の前、至近距離に突然現れた。




「………………」



バサッ


俺の背中から翼が出る。




「…羽…?」

「翼。金翼(きんよく)だ」

「…金翼…?」


「お前に託された。お前なら出来る。下界の扉が開く瞬間(とき)、お前の仕事が始まる」


「…アイツは…悠漓は…助かるのか?」

「お前次第だ!」

「えっ?」

「期限は……1日」

「……1日って……」



「悪魔が散り天使が散る。お前次第だ」

「えっ…?」



「悪魔が散り天使が散る…お前らが選んだ行動が、この結果だ。もし、お前があんな行動を取らなければ、今は、ここにはいない。運命が左右される」



「…………………」



「24時……暗黒の世界になる瞬間だ。明朝、下界は太陽が現れず人は陽を浴びない。深い闇に恐怖を味わうであろう」



「…………………」

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