第10話 お守り

「悠漓、待って」

「何?」




夜の街に外出しようとした、その時、母親に呼び止められる。



チャラ


首から何かを下げられる。




「何?…これ…」


「…もう…あなたの命も長くないわ。少しでも長く、その姿を保てるように。あなたに授けます」


「ママ…」


「そして…これだけは約束して」

「何?」


「これを下げた以上…あなたの力は遮られてしまうわ。悪魔へのダメージが強いの。…そして…これは水城悠漓として…人間として存在が出来るもの。ただし…天使に近付く時、あなた自身…つまり…水城悠漓として近付くのですよ。天使の生命力がダウンしてしまいます。良いですね。さあ、行くのです」




私は外出した。




その途中―――――





「雪那君」

「玲夏ちゃん」



天使と小悪魔のツーショットを目撃。




ズキン


悪魔の心の痛みなのか



水城悠漓としての


胸の痛みなのか


正直分からない想いだった  





しばらくして―――――




「悠漓」



振り返る私。




「…悠…鬼…君?」




そして悪魔化する私。




「待たせたな」

「知らないわ!小悪魔とイチャついてれば?」





フワッ



バサッ… バサッ…


飛び去る私。




「妬いちゃって〜可愛い〜♪」



バサッ…


スッ



私の前に現れるとキスをしようとする次の瞬間――――






バチバチバチ… ブワッ



「きゃあっ!」



弾き飛ばされた。



「…っ…な、何だ?」




首から青い光が放たれている。


気付けば私は水城悠漓として、羽が生えた姿に戻っていた。




『水城悠漓として近付くのですよ』


母親の言葉が脳裏に過った。




「何だよ!それっ!魔除けか!?」

「これは…お守り…」

「お守りだ!?ふざけんなっ!とっとと外しなっ!」


「嫌っ!私の生命力(いのち)は、もう短いの!この姿でいられるのも今日で最後かも分からないんだから!」


「なるほど…そういう事か…だったら力づくでも、そのお守りってやつを引き千切ってやるよ!」




バサッ… バサッ…

近付く悠鬼君。


私達は飛んで暴れていた。




「…はあ…はあ…」

「マジ…うっざー、テメー、自ら外せよ!」

「嫌よ!」

「チッ!ラチあかねーー。今日の所は休息だ」



フッ

天使の姿に変わる悠鬼君。



「…水…城…?」

「…悠鬼…君…」



私は羽をしまい、人間に戻る。



「水城…?」



ガクッ


ドサッ



私を抱き留めた。



ドキン…



「…ごめん…」

「大丈夫?」

「うん…」



次の瞬間、白く暖かい光に包まれている。



「…あったかい…これは…」


「母親が私にくれた、お守り。私の生命力(いのち)も長くないから…悠鬼君も天使の力も、悠鬼雪那として人間の生命力(いのち)失われてきてるんでしょう?でも、私がいなくても、長田さんいるから」


「…彼女は…堕天使に少しずつ生命力奪わているから」


「…えっ…?」


「彼女は気付いていないけど、彼女も生命力(いのち)も短い」


「嘘…」


「天使の生命力から、堕天使は上手くコントロールしている」


「…そっか…ごめん…何だか疲れたから寝るね…」


「水城…?」


「スー…」


「無防備過ぎ…」




俺は彼女を連れ自分の所に連れて帰る。


正直、俺も疲れていた。


家を知らないから仕方がない。





しばらくして――――




「ん…」



ふと目を覚ます私。



ドキーーッ



横を見ると悠鬼君の姿。




「悠鬼…君…?えっ…!?待って…ここ…私の部屋じゃない…」



バッと起き上がる私。



「水城…?あー…ごめん。俺も疲れてたから連れて帰って来た。水城ん家、知らないし」


「そ、そう…だよね…」




目が合う私達。


ドキーーッ




「…か、帰んなきゃ…お、お邪魔…」




グイッ


私の腕を掴む悠鬼君。



ドキン


ドサッ



私の両手を押さえつけた。



ドキン… ドキン…

胸が徐々に早鐘を打つように早くなりザワつく。


悠鬼君は、キスをした。




「…悠…鬼…君…?」




再びキスをされ、そのキスは長く私も瞳を閉じた。




バサッ


「…キス以上…求めたら…俺の事…嫌いになる?」




ドキン


優しい眼差しで見つめる中、何処か切ない眼差し。


そんな悠鬼君は明らかに天使の姿だ。


真っ白い羽が視界に入る。




「天使…?」



再びキスをされ、何度も何度も角度を変えキスをする。



「…悠鬼…君…」



唇は首筋から下へ下へと唇が這う。



「ゆ、悠鬼…君。ま、待って…」

「怖い…?」

「ち、違う。こ、怖いとか…よりも…」



見つめられる眼差しに胸がドキドキ加速する。





胸が張り裂けそうな想い


この想いは……?




「心の中の想いが…誰なのか…私…人間に…なれるかな…?」


「…水…城…?…気付いた時は…もう…遅かった。…天使の俺は…堕天使の心でズタズタだった…俺の命もそう長くはない…」




ズキン…


ポロッ


涙がこぼれ落ちる私。





グイッ


悠鬼君を抱き寄せる。




「…水城…」


「…ごめんね…雪那…私が…あなたを傷付けた…コントロールもろくに出来なくて…気付いたら…私の心も水城悠漓という仮の人間もボロボロで…本当…バカだよ…私…」


「悠漓…泣かないで…」




スッ

私から離れ涙を拭う。


ドキン



「君が泣くと…俺も悲しいから…」





スッ グイッ


私の顔から離れていき始める雪那の手を掴むと自分の手を重ね頬に当てる。

 


二人の想いが1つになる瞬間だった。


































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