第2話 天使の羽

「ねえ、ねえ、この前、えりこの彼氏見たんだけど、超ダッセーの!目疑ったっつーの!」


「えりこって、あのえりこ?」

「そう、そう。あのえりこだよ」



「あの、えりこって…どのえりこだよ!」



俺は近くで、彼女達に聞こえるか聞こえないか位の声で突っ込んだ。



コイツらの女子の中では通用する会話。


共通の女友達(ダチ)じゃないと絶対に理解できない会話だ。


だけど、本当の所どうなのか分かりはしない。





「それよりさー、知ってる?」

「何、何?」


「ゆかの彼氏、超イケメンでさー、すっごい羨ましいんだよな~」


「いいな〜イケメン彼氏!」


「良いよな~」




「お前らには一生無理!」



再び突っ込む俺。





「つーかさー…何アンタ、さっきからさー、人の会話に突っ込んでんじゃねーよ!」


「聞こえてないと思ったのになー」



スッとフライドポテトを取り上げる。




「おいっ!何、人のポテト取ってんだよ!」


「女の子なのに、その口の効き方は、どうかと思うけど…?」


「うるせーな!ポテト返せよ!」


「ポテト頂きっ!」



スッ


消える俺。



ヒラヒラ~……ポト…


真っ白い羽が床に落ちる。




「あれ…?私…何し…」





一部の記憶を消した。





「おっ♪美女発見!!」




スッ




フワリと女の人のスカートが、捲(めく)れる。




「きゃあ!」


「…えっ!?いやいや…それは…堕天使の好みじゃねーな…」





その日の夜――――――




スッ



バサッ




満月の夜。


月明かりによってうつる人影。


そして、翼を広げて立っている黒い影。






「ねえ、ママ。ビルの上に何かいるよー」

「ビルの上?何処?」

「ほら、あそこ」



指を差すも大人には分かりはしないし、見えもしない。




「…あれは…天使…?でも……」



でも私には見える。


ビルの上にある黒い人影。


それは私には理由があるから―――




「…そして…今夜の俺は…天使の日…なーんて……」



バサバサ…


宙を舞う人影。




「…天…使……?」




ヒラヒラ~


羽が私の足元に落ちる。



「…白い…羽…天使…?…この人を見付け出さなきゃ…でないと…私…一生仮の姿のままだ……」




私・水城 悠漓(みずしろ ゆうり)。16歳。


そして私は――――




「悠漓、あなたは、16歳になった時、また、別の人生が始まるの」



母親が言った。



「えっ!?」


「それは悠漓自身の問題でもあるから頑張って乗り越えて自分の人生を歩むのよ。いい?」


「うん、分かった」


「決して簡単なものじゃないから。良いわね。辛くなっても泣きたくなっても良い事ばかりじゃないのよ…でも…必ずしも幸せになれるから…きっと…」



「うん」

「自分で幸せを掴むのよ」

「うん……ねえママ」

「ん?なあに?」



「私のもう一人の人生って?」

「…あなたは……悪魔の血を引いているの…」

「悪魔?」


「そう…まだまだ実感は湧かないだろうけど、いつか必ず自覚する日が出てくるわ」


「…そうか…分かった」







――― 悪魔 ―――




人の心を迷わせて


悪事を進める化物


その化物が


私の身体に存在する




もし仮の姿を戻したければ


天使とキスを交わすこと………




でも……



もし唇を堕天使に奪われた時



人生は狂う――――
















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