第9話 記憶と生命の炎
「ママ……私……」
「どうしたの?」
「…もう…取り返しのつかない事になってる…」
「悠漓…?」
私は涙がこぼれる。
「私の心は…ボロボロだよ…ごめん…ママ…私…人間にはなれないと思う…」
「悠漓…」
「ちょっと出掛けてくる」
私は夜の街を出掛けた。
バサッ
空に飛び立ち悪魔として人生の不幸を楽しんでいた。
その途中――――
「悠漓」
背後から抱きしめられる私。
「雪那、もう遅いじゃない。待ってたのよー。もう少し早く来てよ」
「ごめん、ごめん」
キスをする二人。
私は日に日に悪魔になっていく
記憶は残っていない
ゆっくり ゆっくり
人間である
水城悠漓の記憶は
かき消されていく
―――そして―――
彼も また
天使としても
悠鬼雪那としても
記憶が消えていく
「悠鬼君」
「…長田…」
ある日の放課後。
二人はキスをする。
偶然に目撃する私
スッ
人間の姿から、悪魔に変貌する私。
「彼は私の者よ!」
「…水城…」
「やだ、水城さん、嫉妬から悪魔になっちゃったんだーー!こわーーい!今日は、これ以上、ここにいたらヤバイから帰ろーっと。じゃあね、悠鬼君」
そう言うと長田さんは帰って行った。
スッと人間に戻る私。
フラッと体がフラつく。
「水城…!」
「…ごめん…大丈夫…」
ドキッ
至近距離にある顔に胸が大きく跳ね、押し退けようとする私を抱き寄せキスされた。
「悠鬼…君…」
「悪い…」
「人間同士でも…むやみに…ていうか…長田さん…」
再びキスされた。
「人間同士でいられるのも時間の問題。だったら、その時間楽しむしかない。彼女の想いは知ってるけど、俺の中には…彼女は…いない…」
「えっ…?…でも…寿命縮むかもしれないんだよ。長田さんはどういう想いか分からないけど、私なんか、いつ悪魔が現れるか分からないのに…」
「それは…俺も同じだから。天使だったり堕天使だったり…堕天使は上手くコントロールしてる。気まぐれだから…」
「………………」
再びキスをされ深いキスをされた。
この時間が続けばいいのに……
だけど……
私達の未来は
既に闇に包まれていた……
ある日の夜――――
「水城」
「悠鬼…君…?」
悠鬼君の人間の姿であり、堕天使の羽の色。
「あんまり、その姿でいたら消耗するんじゃねーの?少しでも自分の存在……」
「一層の事、私を悪魔にしたら?」
「そう!じゃあ、お言葉に甘えて」
私達はキスをする。
ドキン…
「水城」
「…悠鬼…君…」
バサッ
「…天使…?」
「君の心には…俺は…いない…?」
「…えっ…?」
「…俺の中に…君は…いる…」
ドキン
「いつの間にか夢中になっていた…でも…俺の2つの生命は…もう長くはない…正直…疲れたんだ…」
「…悠鬼…君…」
「…悪い…今の聞かなかった事にして…第一…君の心には…俺じゃなくて…もう一人の俺…堕天使の想いがあるはずだから…」
「…悠鬼…君…」
バサッ
飛び去って行く悠鬼君。
「悠鬼君っ!待って!」
悠鬼君は止まる事なく去って行った。
私の心には誰がいる…?
悪魔の水城悠漓は
堕天使の
悠鬼雪那が好き…?
相思相愛だから
だけど最近
人間としての悠鬼君が好きと思う
これは
私が人間として過ごしている時
でも……
悪魔の心が
影響しているのかもしれない
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