第6話 ハートの形
ある日。
「相変わらずな悪魔さんだ事で。今日は…大人しくしとこうかな?」
スッ
堕天使の俺は姿を消す。
「あれ…?…俺…あれは…人…?…悪…魔…?」
フワフワと近付く俺。
「…君は…人の不幸を喜ぶ悪魔…?」
「誰です!?」
「俺は天使。人の不幸よりも幸せを望む者」
「堕天使を、お出しなさい!」
「堕天使?俺は天使!堕天使はいないし、知らない!」
「ならば私と接吻(くちづけ)を交わしましょう?そうすれば堕天使が存在する」
「えっ…?」
「想いのないキスをすれば天使は弱くなる。唇を交わす度に天使は生命を奪われ最終的には消滅。実は、人間であり仮の姿の彼女は、堕天使のあなたに唇を奪われてるのよ?この際、私とキスしましょう?堕天使さん」
「…ち、違っ…俺は天使!」
「本当にそうかしら?」
近付く悪魔の私。
「や、辞め…来るな…!」
グイッ
両腕を掴む悪魔の私。
フッ
「………………」
「…水城…?」
ドキッ
至近距離にある悠鬼君の顔に胸が大きく跳ねた。
人間の姿で羽が生えた姿。
心は水城悠漓だ。
「…悠…鬼…君…?」
私はバッと慌てて離れ、背を向ける。
「ご…ごめん…!…ていうか…何…私…自らキス…しようと…悪魔になってしまう…相手は堕天使なのに……」
「………………」
フワリと背後から抱きしめられた。
ドキン…
「水城…堕天使にキスされたって?」
「えっ…?」
振り返ろうとする私。
「振り向かないで!」
「…悠…鬼…君…?」
「…悪魔の君は…堕天使の存在を知る…だけど…まだ…お互い知らない事がありすぎる」
《悠鬼…君?別の人?どういう…事…?》
クラスメイトの彼のはずなのに
違う人みたいに別人な話し方
「…悠鬼…君…だよね…?」
「違うよ」
「えっ…?」
「他人の空似。似てる人はいるっていうし俺は違う…それじゃ」
悠鬼君は去って行く。
「待って!」
振り返るも、既に悠鬼君は遠く離れていた。
「悠鬼君っ!」
ガクッ
体のバランスが崩れる。
「えっ…!?きゃ…きゃあああーーーっ!!!」
羽が消え、下に落ちて行く私。
「水城っ!!」
ブワッ
バサッ バサッ…
フワリと宙に浮く私。
ゆっくり目を開ける。
「えっ…?」
お姫様抱っこ状態の私。
「あんたさーー、死ぬ気ーー?」
「…悠鬼…君…?えっ…!?」
《悠鬼…君?》
「今、このまま、あんたを奪い去ってやろうかな?」
ドキッ
「えっ…!?」
「心も身体も全て」
ドキッ
「何…言って…」
「囚われし者だから。イイ餌食じゃん!今のあんた!」
「だったら奪えば?全て!そうすればあなたは更に堕天使に進化。そして私は…」
「更に悪魔化する」
「……………………」
とある建物の屋上に降ろす。
「悠鬼…君…」
「じゃあな!水城」
「待ってよ!どうして?」
「えっ…?」
「どうして…こんな…あんたイイ奴なのか悪い奴なのか分かんないよ!!」
「俺は堕天使だから。人の心を惑わし、もて遊ぶ。良いも悪いも俺の特徴。だって…堕・天・使・だから。あんたも悪魔なら、もう少しコントロール出来るようにしねーと、そのうち中途半端なまま死ぬぞ!命いくつあっても足りなくねーか?」
「………………」
「あんたって意地悪っ!あんたが天使なら良かったよ!」
「堕天使も天使だけど?」
バサッ
そう言うと飛んで行った。
「………………」
「…ていうか…悠鬼…君…今のは堕天使…」
堕天使と天使
不可解な現象
―――― そして ――――
私の心を狂わせ
惑わせる
悪魔の心と
仮の人間の心
ハートの形が
片方ずつ
何処かに
置き忘れてきたのか
落としたのか……
ハートの形が
繋がらず
1つにならずにいた
―――― そう ――――
恋のハートは
片道だった……
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