第2話 人生、二刀流
「人生は一度っきり」と、後先考えずに生きた七十年余り。
白い巨塔を離れた頃、国際医療協力に取り組んだ頃、両親の介護で老人医療に転身した頃、東日本大震災の医療支援に飛び込んだ頃、などなど。
後悔はないが、そのたびにリセットしていたら、今の〈滝沢ぐらし〉は何番目の人生になるだろう。
震災の年から始めた〈三年日記〉が間もなく三冊目の三年目を終える。
そもそも日記を付けるのは備忘録として日々の記録を残すためだ。
特に三年日記は後で役に立つ。
上段(一昨年)と中段(昨年)の記録を眺め、下段へは今日の分を好きなように書き込む。
つまりは時々の意を筆のままに綴る…「意到筆隋」である。
日記と随筆の違いだが…。
随筆とは「他者が読みたくなるように書くもの」と岸本葉子は言う。
読者に「へえーそうなんだ」と思ってもらう文芸だとも。
「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く、面白いことを真面目に、真面目なことを愉快に、そして愉快なことはあくまで愉快に」と、井上ひさしは更にレベルを上げる。
ちなみに小説は…。
「何を、どのように書いてもよい自由な文学形式である」と筒井康隆は言い切る。
そして「正しい日本語と小説の文章は違う」とも。
目から鱗が落ちた。
医学に限らず、論文では正確に伝えることが最優先。
そんな文章ばかり、四十年以上も書いてきた。
これからは、心のなかにあることを自由な形で表現したい。
パソコン画面を縦書きに変えたら、作文の思考回路まで縦横無尽だ。
気になるのは〈他者が読みたくなるように〉書けているかどうか。
〈爺医〉で〈物書き〉の二刀流人生が始まった。
「随筆家の名刺も作ろうか」と聞いたが妻は笑うだけ…。
○遣りたしが遣らねばならぬにならぬやう楽しみながら老い生きゆかむ
(20191201)
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