第5話 五百の〈錘〉
「一日一首」と詠み続け……気づけば(数だけは)五百首ほどになった。
「ひとえに梧桐学先生(ウェブものぐさ短歌教室)のおかげ」と感謝の一首。
○かいなでの歌詠みなればいとうれし「添削不要」と判じらるる時
論文を量産した頃の習慣か、データベースを作成。
「七十の手習ひ」と名付け、医師脳(いしあたま)を号した。
○しちじふの手習ひなるや歌の道つづけてかならず辞世を詠まむ
最初の二日分には励ましのコメントだけだった。
その駄作がこれである。
○趣味とはれ「短歌」とこたふれど未熟者ゆびをり数ふるななつむつやつ
○馬手にペン弓手ゆびをる歌詠みぞボケ予防とてバイタスクせむ
半世紀以上も昔、青森高校で古文漢文を習わされた。
そんな自分が古希すぎて短歌を詠もうとは……。
○「無駄だよ」と十七のころ厭ひたる古文の教師の渾名は「ばふん」
細胞生物学者で歌人の永田和宏は曰く「一首一首の歌には一瞬一瞬の〈時の断面〉が輝いている」と。
それを(娘で)歌人の永田紅は〈時間の錘〉と表現する。
一首の歌を作ることにより、その時々に〈錘〉がつくのだろう。
これからの吾が人生を思いつつ……。
○願はくは医者つづけゐる日常に一瞬の〈時間の錘〉を詠みたし
さらに願わくは、〈錘〉として多くの喜びや楽しみが残りますように……。
○うれしきは毎朝いるる珈琲に「おいしいね」と言ひて妻が笑むとき
○楽しきかな利用者来る前のリハ室でマシーン踏みつつ歌をつくるは
○楽しきは診察室にて交はすなる患者との会話のかみあひしとき
たまには痩せ我慢を詠むこともあろう。
○生き甲斐が働き甲斐なる生活に「老い甲斐あり」とふ痩せ我慢もなす
(20200301)
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