第14話 終の親孝行

  老医われ終の職場に選びしは介護医療院ふるさと津軽の(医師脳)


 2017年の介護保険法改正で創設されたのが〈介護医療院〉である。

「特養と老健のハイブリッド」とか「医療介護付き終の棲家」とも聞く。


 〈特養〉とは、特別養護老人ホームの略で、自宅での生活が難しい高齢者を対象とした施設だ。


 一方の〈老健〉は、介護老人保健施設の略で(在宅復帰を支援する)中間施設のはずだった。

 ……が、入所期間の長期化で「第二特養」との陰口も聞かれる。


 そもそも(終の棲家の)特養と(入所期間限定の)老健とでは役割が違うはず。

 慢性期病院からの在宅復帰を支援するため、老健には常勤医師が置かれリハビリ部門も設置されている。

 そんな老健だが、実際は(特養へ入れない)軽度の要介護者も数年から十数年にわたって利用する。

 老健の「在宅復帰」は御題目だ、というのが津軽の習いらしい。


 介護医療院という響きで連想するのは、今から1300年ほど前に光明皇后が創設した〈施薬院〉だ。

「貧しい病人に施薬・施療した施設だ」と、子供のころに学校で習った。

 その現代版でもなかろうが、我が法人の元村成理事長は語る。

「信頼される慢性期医療の実践に続く、人生の終末期を平穏に見守る医療と介護を展開してゆきます」――。


 この平穏な死、つまり「平穏死」なる概念は、全国的に広まりつつある。

 だがそれを高齢者本人は願っても、子どもが(様々な理由で)親の平穏死を邪魔する場面に出会う。これも津軽の現実だ。


「親孝行したいときに親は無し」と言う。

 自戒を込めて、親のある方には長尾和弘著『平穏死という親孝行』の一読を勧めたい。

 最後の親孝行を!


(20220601)

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