第18話 桃太郎の正義
桃太郎も芥川龍之介の手になれば心証かはりて理不尽とさへ(医師脳)
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宝の山だ!
最近も、芥川龍之介の短編『桃太郎』――鬼ヶ島征伐を鬼の側からパロディ化――にガツンとやられた。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/100_15253.html
歴史を振り返れば「死人に口なし」と、記録の多くは勝者(侵略者)の側からのものだ。
霊長類学者の山極寿一氏は著書『ゴリラからの警告』で、その訳を語る。
「人間は話を作らずにいられない性質を持っている。人間が過去の怨念を忘れずに敵を認知し続け、それを世代間で継承し、果てしない戦いの心を抱くのは、それが言葉による物語として語り継がれるからだ」と。
豊臣秀吉の二度にわたる朝鮮への出兵(文祿・慶長の役)を、侵攻された側は「壬辰・丁酉の倭乱」と呼ぶらしい。
日清戦争で多額の賠償金や台湾などを手に入れた日本だが、日露戦争の際には(人的被害・金銭的負担が莫大だったこともあり)和平交渉に対する国民の不満が日比谷焼き討ち事件まで起こした。
昭和になると「統帥権」が拡大解釈され、統帥機関は(立法・行政・司法)の三権を超える。その結果が、満州事変・日中事変・ノモンハン事変……などだ。
第二次世界大戦では「鬼畜米英!」と叫んだ日本の真珠湾攻撃に、奇襲された米国は「リメンバー・パールハーバー」と猛烈な反撃に出た。
そんな敗戦の生き証人世代は減り、戦後生まれの我ら団塊世代でさえ後期高齢者となる。
「たかが御伽話に目くじらを立てなくても」と失笑する向きもあろうが(ボケの始まったせいか)桃太郎の鬼ヶ島征伐が気になってしょうがない。
(20221001)
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