第12話 満腹の先


「ふーお腹いっぱい。もう食べられない」


 三人の美少女たちは好きなだけたこ焼きを食べ続けてお腹を抱えていた。

 食べてくれるのは嬉しいが、食べ過ぎだ。

 途中でたこが無くなってウインナーやかまぼこなど代わりになる食材を使ってたこ焼きを焼いたが、それも全て食べきってしまった。

 片付けをしていた俺はふと三人を見ると各々好きな体制で寝ていた。

 食べ過ぎて眠くなったのだろう。しばらく寝かせてやるか。

 それにしても散らかしてくれたな。片付けがいがありそうだ。


「ん、んん」


 フラフラと起き上がったのはみくりちゃんだ。


「あ、寝ていていいよ。片付けは俺がやっておくから」


「ありがとうございます。私にも何かお礼をさせてもらえませんか?」


「お礼? いや、いいよ。気にしなくていいから」


「いえ、そういう訳にもいきません。身体でお礼をしますから」


 そう言ってみくりちゃんは上着を脱いだ。


「は? ちょ、みくりちゃん。何をしているの?」


「どうぞ。好きに触ってください」


「いや、いや」


 何が起きている? お礼に自分の身体を触って欲しいなんて普通言うだろうか。

 絶対におかしい。


「みくりちゃん。落ち着いて。俺はそんなお礼を求めていないから」


「そうですか。それは失礼しました」


 みくりちゃんは上着を着る。あれ、俺惜しいことをした?

 いや、でも今のは普通に考えておかしい。まるで何かに操られているような。


(――――――――――――――――――――っ!)


 あれ? 前にもこんなことがあったような気がする。

 確かあれは魅音が俺の家に泊まった時だ。

 急に俺が好きだとか自分の身体を差し出すようなことがあった。

 いや、そう言う意味では架星さんの時もそうだ。

 あの時は熱のせいだと思ったけど、別の原因があったのか。

 だが、その原因はどうしても分からない。

 今までの不思議な体験を踏まえると次の行動ってもしかして。


「ねぇ、味見くん。好き」


 みくりちゃんは俺の腕を掴んでギュッと胸に押し当てた。

 やっぱりそうだ。何故か急に俺に好意を向けるこの謎の現象。

 だが、時間が経てば自然と薄れる。


「んん。ん! あ、みくりちゃん。ずるい! そこは私の場所だよ」


 目を覚ました架星さんは抱きついているみくりちゃんを見て慌てるように俺の反対側の腕を掴んだ。


「味見くんは私の何だから」


「何を言っているの。私のだよ」


 美少女が二人。まさに両手に花の状態が実現した。

 一見、華やかに見えるが、俺を取り合うその姿は全然華やかではない。


「ちょ、二人とも落ち着いて。喧嘩はやめてくれ!」


「じゃ、半分ずつ分け合おう」


「そうだね」


「へ?」


 俺はソファーに座らされてその左右にみくりちゃんと架星さんが座る。

 サンドイッチ状態にされてギュッと抱きしめられた。


「あの、これは一体、どういう状況でしょうか?」


 素朴な疑問を二人にぶつける。


「味見くん。綺麗な肌しているね。スベスベ」


「どれどれ? あ、本当だ」


 まるで犬のように俺は撫で回された。

 素直に喜んでいいのだろうか。

 そんな時だ。魅音は目を覚ました。


「やばい。寝ちゃった。ねぇ、郁真。何か飲み物……って何事!?」


「魅音、おはよう」


「おはようじゃないわよ。な、何よ、それ! 何ハーレム築いているのよ。私のいないところで!」


「いや。気づいたらこうなっていた」


「ずるい。私を退け者にするな!」


 ガッと魅音は俺の腹に向かって抱きついた。


「ちょ、マジでどうなっているの?」


 俺は美少女三人から懐かれていた。

 それでも素直に喜べない自分がいた。

 原因は不明だ。

 このままでは俺の精神が持たない。


「味見くんの耳、綺麗な形しているね。ちょっと舐めちゃお」


「へ?」


 みくりちゃんはついに大胆な行動に出る。

 俺はその場を動けずにいた。

 も、もうダメだ。スイッチが入っちゃいそう。


「ご、ごめん。ちょっとトイレ!」


 俺は精神をリセットすべくトイレに逃げた。


「あ、味見くんってば!」


 

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