家の庭に生えていた惚れ薬草を大葉と思って料理に出したらS級美少女たちに好かれるようになった〜料理一つで美少女の胃袋と心を独り占めします〜

タキテル

第1話 家の庭に生えていた


「お! これ、大葉じゃん。ラッキー」


 そう思った俺は家の庭に生えていた大葉を採取した。

 俺、味見郁真あじみいくまは料理が趣味の高校一年生だ。

 飲食店の家庭から育ったわけではないが、両親が多忙なことから料理をするようになったことがきっかけで趣味に変わっていた。

 殆ど自分で食べる用に作っているが、繰り返すことで料理が上達していく楽しさから常に料理の研究をしている。

 そんな俺は家の庭に何か生えているものが気になり、確認しに来た。

色、形、香り。全ての条件から大葉と俺は判断した。

それにしてもどうして庭に大葉が生えているのだろうか。

母親が内緒で種を植えたのか、自然に流れてきたものが育ったのか分からないが使えるものは使おうと生えている大葉を全て採取した。


「丁度、大葉が欲しかったんだよな。料理の飾りつけとしてもメインとしても使えるから有難い食材だ」


 大葉と見込んだものを採取した俺はウキウキでキッチンに向かった。

 綺麗に水洗いして茎をカット。一枚一枚丁寧に揃えて保存する。


「さて。大葉で何を作ろうか。手始めに大葉の天ぷらでも作るか」


 熱した油に溶き卵、天ぷら粉をまぶしてサッと揚げる。

 シンプルだがこれがまた旨いのだ。


「うまそうに揚がったな。それでは頂きます」


 サクッとした歯ごたえが口いっぱいに広がる。

 大葉の食感を楽しむならやっぱり天ぷらに限る。


「紛れもなく大葉だな。よし。これで明日の弁当用にもう一品作るか」


 ウキウキで大葉料理を弁当に詰めて学校に持っていく。




 翌日の昼休み。俺は昼食を取ろうと弁当を広げた直後である。


「いっただきまー……」


「郁真!」


 声を掛けてきたのは幼馴染の相坂魅音あいさかみおんだ。

 いつも勝気で堂々とした立ち振舞いが特徴である。

 ゆるふわ系タイプで何かと俺を弄ってくる。

 俺を弄らないと死ぬのではないかと思うほど、毎日のように絡んでくる。

 嫌な予感しかしない。まぁ、いつものことだが。


「魅音。何か用か?」


「別に。またぼっち飯?」


「別にいいだろ。俺の勝手だ」


「ふーん。もーらい!」


 魅音は俺の弁当から大葉の生春巻きを摘んで食べた。


「あ、俺のおかず勝手に食べるな」


「何これ。旨っ! 郁真が作ったの?」


「そうだけど」


「ねぇ、皆! ちょっと来てよ!」


 何、何と魅音はクラスの友だちを呼ぶ。

 俺の机の前に美少女たちが群がっていた。

 いつも遠くから見ていた可愛い女の子がこんな至近距離にいることに俺はどうしていいか分からなくなっていた。


「どうしたの? 魅音」


「これ食べてみてよ。凄く美味しいよ」


「え、でも悪いし」


「大丈夫。変な気遣いはいらないから。いいよね? 郁真」


「どうぞ。皆で食べてください」


「じゃ、一口」


 と、次々とクラスの美少女たちは大葉の生春巻きを口に運ぶ。

 俺が作った料理を誰かに食べてもらうのは魅音や家族だけだ。

 不味かったらどうしようと不安になりながら自席で小さくなっていた。


「美味しい。もしかして味見くんが作ったの?」


「えぇ、そうです。料理が趣味なもので」


「へー凄い」


 魅音の友だちは可愛い女の子しかしない。

 男から見て魅力的な女の子なのでいつも羨ましく見ているが、今は俺の前に集まっているという異例事態だ。

 ただ、その目的は俺ではなく料理にあるというのが虚しい。

 俺はパッとしないモブ顔で特にイケメンでも性格がいい訳ではない。

 あるとすれば趣味でする料理くらいで女の子にモテる要素としては薄い。

 だが、俺が作った料理は意外にも好評で女の子たちは喜んでくれた。

 自分が作った料理を目の前で食べてくれて美味しいと言ってくれるだけで俺は救われた気がした。料理をして良かったと。


「ありがとう。味見くん。お礼に私のおかずあげる」


「じゃ、私もこれどうぞ」


 弁当の蓋いっぱいにお礼のおかずが置かれた。

 とりあえず俺の昼飯に困ることはなくなった。


「ちなみに私はお礼のおかずはあげないから」


 魅音は憎たらしく言う。


 別に最初から期待していた訳ではないが、ただおかずを奪われただけに少し不満を覚える。魅音はいつも俺の上から物を言うので慣れているのだが、どうしても頭が上がらなかった。今では俺が下で魅音が上という構図が出来上がってしまっている。

 すると、魅音は俺の耳元にこう囁いた。


「料理の腕、あげたね」


 ただそれだけを呟いて女子グループに戻っていく。


「俺を褒めることもあるんだな。何か不吉な予感」と、俺は素直に喜べなかった。



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新作です。

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