第3話 私の家に来て
「味見くん。ちょっといいかな?」
放課後、帰ろうとシューズロッカーで靴を履こうとした最中である。
俺に声を掛ける一人の美少女。
魅音の友だちの一人であり、クラスでは可愛いランキングの上位に位置する彼女。
長い黒髪に横で髪の一部を束ねているのが特徴だ。
おしとやかで気品のある女の子という印象がある。
一度も喋ったことがない間柄なのに何故、俺に声を掛けたのだろうか。
「架星さん? あの、俺に何か?」
「えっと、急にごめんね。実はその、味見くんと仲良くなりたいなぁ、って思って」
架星さんは照れ臭そうに言う。
夢? ドッキリ?
架星さんが俺と仲良くなりたいなんて非現実的みたいで信じられないというのが正直なところだ。
「あ、あの。どうして俺なんですか?」
「どうして? あぁ、実は昼に食べたおかずがあまりにも美味しくてどうやって作っているのかなって」
「あぁ、そういうこと?」
仲良くなりたいのは俺ではなく俺の作る料理ということだ。
そんなことだろうと思ったが、料理でこんな可愛い子と接点が持てるなら願ってもいないおいしい展開ではないだろうか。
「ごめん。迷惑だったかな?」
「全然そんなことありません。こちらこそよろしくお願いします」
「ありがとう。それであの、早速だけど、私の家に来てくれない?」
「え? いきなり?」
「あ、ごめんなさい。料理を見せてほしいなぁって思って」
「そういうことなら構いませんよ。いつにします?」
「今から」
「今から?」
「都合が悪ければ別日でもいいんだけど、どうかな?」
「いいですよ。暇だったところです」
ん? こんな簡単に女の子の家に上がり込んでいいのだろうか。
そんなに俺の料理に惚れ込んだということか。だとしても男を家に上げるのは早すぎる気がするが、そういうのが普通なのか。知らなかった。
「じゃ、いきましょうか。味見くん」
「は、はい」
ギュッと架星さんは唐突に俺の手を握ってきた。
「え?」
「どうしたの?」
「いや、急に手を……」
「ごめん。嫌だった?」
「そうじゃないけど」
「良かった。早く行こう!」
道中、架星さんとの距離が近い。
仲良くなった間柄とはいえ、まるでカップルのように距離が近い。
俺じゃなくて俺の料理に惚れているってことだよな?
「ここだよ」
街中の中心にある三階建ての豪邸に足を止めた。
ここが架星さんの家?
可愛いだけではなく家も裕福なのか。友だちになれて良かったと思う。
「さぁ、上がって。今、誰もいないから気楽に寛いでね」
「はい。お邪魔します」
「疲れているでしょ? 何か飲み物を持って来て上げる」
「ありがとう。お茶でいいよ」
「分かった。ちょっと待ってね」
架星さんは気遣いができて優しい。
幼馴染の誰かさんとはえらい違いだ。
そう考えると幼馴染になるなら架星さんのような人が良かった。
「はい。どうぞ」
「ありがとう」
リビングの椅子に腰掛けて冷たいお茶を一口含む。
「味見くんっていつから料理をするの?」
「どうだったかな。小学生の時からだから正確な日は覚えていないや」
「へー。そんな前からやっているんだ。凄いね」
「まぁ、最初は無理やりやらされていたんだけど、次第に楽しくなって自分から進んでやるようになったよ」
「へー。料理が出来る男ってかっこいいよね」
「そ、そうかな?」
料理が趣味で褒められたことが嬉しかった。
つい、鼻を伸ばしていたと思う。
「それで味見くん……」
「あぁ、料理だったね。実際に作ろうか? それともレシピを書こうか?」
「いや、料理はもういいよ」
「え? もういい?」
「あの、今日一日中、ずっと味見くんのことを考えているの。だから自分がどういう気持ちなのか確かめさせてもらっていいかな?」
確かめる? 何を?
と、いうより俺の料理が好きって意味じゃなかったのか?
様々な疑問が頭に巡り、架星さんは俺に迫った。
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