第10話 美少女訪問


「うーん。また生えているな」


 ある日の朝、俺はふと家の庭を覗くと大葉が無数に生えている光景を目撃した。

 以前に全て採取したはずだが、気付けばまた生えていたのだ。

 母親にチラッと聞いたのだが、大葉の種は植えていないと言っていた。

 じゃ、この大葉はどこから生えて来たのだろうか。 

 風に揺られて家の庭に流れて来たと考えるのが普通である。


「まぁ、生えているからって別に困る訳じゃないしな。よし。また採取して大葉料理を作ろう」


 儲け。儲けと思いながら俺は庭に生えていた大葉を採取して水洗いをした。


「あんた。また庭に生えていた怪しいものを食べるつもり?」


 仕事の支度をしながら母親は俺に声を掛ける。


「別に変なものじゃないよ。ちゃんとした大葉だし、食べなきゃ損だよ」


「まぁ、あんたの大葉料理は美味しいからいいんだけどさ。お腹だけは壊さないでよ」


「分かっているよ。見た目が悪かったり、色は変なものは避けて使っているから大丈夫だって」


「ならいいけど。じゃ、お母さん、仕事に行ってくるから家のこと頼んだわよ」


「了解。行ってらっしゃい!」


「行ってきます」


 母親が仕事に出かけてしまい、家には俺一人。つまり自由の時間が訪れたという訳だ。


「よし。大葉の粉末パウダーでも作るか。これだったら薬味として全ての料理に入れられそうだから使い勝手が良さそうだし」


 俺は一から粉末パウダーを作った。

 乾燥させたり細かくしたり手間はかかるが、自分で作ったという達成感と万能薬味から広がる料理が頭を活性化させる。


「出来た! 大葉の粉末パウダー。完成だ」


 本日取れた大葉を全て使って粉末パウダーを作り上げた。

 四百グラムほどとあまり多くない分量だが、一人で使う分としては充分ではないだろうか。


「さて。ここから広がる料理は無限大だ。何を作ろうか」


 休日は料理をして過ごすことが多い俺は一人で常に美味い料理を研究して試行錯誤をする時間が楽しい。

 そんな時だ。


『今、家にいる?』と魅音からメッセージが届いた。


「いるけど?」と返した瞬間である。


 ピンポーンとインターフォンが鳴った。


「ん? 誰だ?」


「ヤッホー! 来てやったぞ」


 玄関先には魅音の姿があった。それだけではない。その後ろに二人の美少女を引き連れている。

 架星楓かけほしかえでともう一人。初めてみるタイプの美少女だ。


「あの、どうしたの?」


「今、暇でしょ? 上がっていい?」


「そんな急に来られても」


「タコパしようよ。食材は買ってあるからさ。たこ焼きプレート家にあるでしょ?」


「あるけど」


「よし。いいって。お邪魔します」


「ちょ、魅音」


 ほぼ強制的に魅音は俺の家に入っていく。

 魅音を入れて美少女が一気に三人が俺の家に来るという異例事態だ。


「お邪魔します。ごめんね。味見くん。魅音がどうしても行くって聞かなくて」


 申し訳なさそうに架星さんは俺に謝る。


「別に構わないよ。いつものことだから。遠慮せずに寛いでいいから」


「ありがとう。実は味見くんの家に来てみたかったの。へへ」


 架星さんは嬉しそうに笑う。


「そういえば……」と、俺は初めて見る美少女に目を向ける。


「あ、そういえば味見くん。会うのは初めてだったよね。若葉わかばみくりちゃん。昔、塾が一緒で今でも付き合いがある子だよ」


「よろしくお願いします」


 若葉みくり。茶髪のパーマが特徴で身長は百六十五センチ前後。

 いや、そんな基本情報よりも一番目についたのは胸だ。

 服の上からでも分かる爆乳。一体、いくつあるのだろうか。


「こら。郁真。みくりちゃんが可愛いからって手を出すなよ」


「出さないよ」


 魅音は黙って入れば普通に可愛い。

 架星さんは気品があって上品のある可愛さ。

 そしてみくりちゃんは照れ屋なタイプだが、魅力のある身体の美少女。

 この可愛い三人が俺の部屋に集合している夢の展開に胸の鼓動が高まる。


「さて。それでは楽しいタコパを始めようか。郁真。生地作って」


「俺がやるのかよ」


「あんた、そういうの好きそうじゃない。私たちはテーブルの準備をするからよろしく!」


 どのみち、料理を作ろうとしていたが、たこ焼きを焼くことは想定していない。

 でも、美少女たちとやるタコパも悪くない。

 そう思った俺はウキウキでキッチンに向かった。


「さて。始めますか!」


 俺はキッチンに立つと人が変わるようにキリッと顔つきが変わる。

 俺の唯一、輝けるフィールドと言えるからだ。


「格好つけなくていいから早くしてよね」


 魅音は相変わらず俺をお手伝いさんか何かと勘違いしているようだが、俺には俺のこだわりがある。

 調理開始だ!

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