額とくちばしの出会い、それは想像もできない非日常の始まり

世界の常識を大きく作り変える「神粒」と言われる物質が世間に公表された。
今作は意志の力に反応するこの物質を下地に、一人の男子高生「大磯 拓磨」の変化する日常と立ちはだかる困難に立ち向かうジュブナイルな現代ファンタジーです。

ちょっと童顔で眼鏡をかけ大人しい雰囲気の主人公の拓磨くんはある日、ゴミ捨て場で一羽の鴉と出会い、額にくちばしからの有難いキスを頂きます。何事かと思えば後日、その鴉が彼の部屋の窓を叩き訪れたではないですか、部屋に招き入れると鴉はそのまま拓磨くんの唇に向かって衝撃のセカンドキス! 読者がドキドキして見守っていると、鴉の姿は徐々に変化して黒いセーラー服が似合う美少女に。
今作のヒロインの一人、鴉っ娘「ヤタ」ちゃんの登場です。

そんな出会いを経て一人と一羽はとある探し物を見つける為に奔走する事になります。
その過程で出会う物語を彩る個性的な登場人物達、オカルトに詳しい高根の花のクラスメイト「加賀見 愛梨」、たくましい神社の先輩「古賀 正樹」、アンティークショップを営む謎の男性「白戸 英寿」。拓磨くんと関わる彼ら彼女もユニークな人柄で読んですぐに好きになりました。

穏やかな日常を変える神粒によって発生した異変、ヤタちゃんの探し物、裏で動く国と謎の宗教団体の存在。時にその変化は拓磨くんに襲い掛かり、彼は自らの意思で変化と戦っていくことを決意します。

序盤は何事も無い学生生活が静かに始まり、その節々に微かに違和感を感じる伝奇小説のような一幕にワクワクして、話が進むごとに違和感が大きくなる展開にゾクゾクしました、話作りの上手さと設定の深さに驚き、最後まで飽きることのない胸躍る展開の連続でした。

今作で私が一番魅了されたのは何と言っても主人公の拓磨くんとヒロインのヤタちゃんのベストコンビです。
とにかくこの一人一羽が可愛いんですよ! ちょっとした掛け合いや仕草にいつまでも眺めたくなる愛嬌があり、拓磨くんが眼鏡の奥から時折見せる男らしさもグッド!! 優しくて度胸もある彼にもふっと寄り添うヤタちゃんの姿が最高の一言。

第一部が終わり、まだまだ重なり広がる合わせ鏡のようなボーイミーツガール。
日常から一歩離れた、ちょっとした未知への探検。素晴らしいお話をどうぞ。

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