短い文章の中に、心を揺さぶるものが詰まっています。
なんとなくとぼけた印象から始まる物語は、けれど、宇宙人の正体、主人公との関係、そして人間の辿ってきた運命、という設定が明かされてから、一気に色を変えてしまいます。
全てのやり取りにある切ない意味が鮮やかになるのです。
そのカタルシスと、美しく哀しい物語のハートに心を掴まれるでしょう。
「変化」も含め、明確に「手遅れ」であるように感じられるのに、それでもそれを否定するところに、また大きく感情を揺さぶられます。
おそらく、それは主人公の感情でもあり、彼の感じた心の痛みを読者も感じられるような描きぶりでした。
軽口が、より物語の切なさを際立たせている点も、非常に良かったです。
ラスト、彼が何をしようとするか明示されていないところも、希望とも絶望とも取れる余韻を心に残していきます。
2000字に満たない物語の中に、エモさがギュッと凝縮された、素敵な作品です。
これは、冒頭だけを見ると、普通の宇宙戦争の一幕なのではないかと思える。
でも、だんだん会話をたどると、彼らの過去と地球の過去が見えてくる。
いったい何が彼らを変えたのか。いや、何が彼らをこんな目に合わせるように仕向けたのか――?
激闘の勝者と敗者は深い愛で結ばれていたはずだった。
その気持ちは今も――。
本当に、もう涙腺が壊れかけました。隣に家族がいるので、必死にこらえてますが、こっそりパジャマの袖で目尻を拭いてます。
小説を見てここまでなるのは初めてです、正直言うと。こういうのには強い方なので。
どこまで深いんでしょう、この物語は。何度でも読み返せます。なんならこれを研究して一つの冊子を出せそうなくらい深い話です。
いったい何が彼らをこんな目に合わせるように仕向けたのか――彼らの過去には何があったのか――それでも最期まで愛の気持ちは――。
非常に切ない、深い深い愛のモノガタリです。