2000字に満たない文章の中に、ギュッとエモさの詰まった作品

短い文章の中に、心を揺さぶるものが詰まっています。

なんとなくとぼけた印象から始まる物語は、けれど、宇宙人の正体、主人公との関係、そして人間の辿ってきた運命、という設定が明かされてから、一気に色を変えてしまいます。
全てのやり取りにある切ない意味が鮮やかになるのです。

そのカタルシスと、美しく哀しい物語のハートに心を掴まれるでしょう。

「変化」も含め、明確に「手遅れ」であるように感じられるのに、それでもそれを否定するところに、また大きく感情を揺さぶられます。
おそらく、それは主人公の感情でもあり、彼の感じた心の痛みを読者も感じられるような描きぶりでした。

軽口が、より物語の切なさを際立たせている点も、非常に良かったです。

ラスト、彼が何をしようとするか明示されていないところも、希望とも絶望とも取れる余韻を心に残していきます。

2000字に満たない物語の中に、エモさがギュッと凝縮された、素敵な作品です。

その他のおすすめレビュー

ぞぞさんの他のおすすめレビュー130