月明り浴びて we get you 優しさ溢れる女怪盗ここに参上!!

作者である結月 花さんが贈る恋愛は時に明るく、時に重く、真摯な愛が心に突き刺さり私は毎回この方の作品に魅了されてきました。恋愛小説が好きになったのは結月さんのおかげですね。
今作は初の挑戦となる現代を舞台にした恋愛物語、他の長編ではファンタジー要素が組み込まれていましたが今回はその表現を使わず、現代のリアルな世界観を取り扱ってます。

主人公の女性は小学校で先生をしている『浅雛あかり』さん、優しく明るく子供想いな人柄は読み始めてすぐに好きになりました。
そんな彼女にはとある秘密があり表では先生として、そして裏では子供たちの時間を盗む怪盗『ぴよぴよ仮面』として夜に活動していたのです。

現代の家庭が抱える問題、それは両親が共働きしている影響で夜は一人でお留守番する子供たちの増加、あかりさんの学校でも夜に一人ぼっちになる子供が多く、そんな子達の力になる為、彼女は怪盗になる事を選びました。

学校終了後に一人お留守番の家庭に侵入して、子供とコミュニケーションを取りながら孤独さを盗む。他人の家に勝手に忍び込む事は犯罪行為ですが、それでも孤独に膝を抱える子供の力になりたいと純粋に思うあかりさんの優しさに応援する気持ちが強くなります。

そんなこんなで怪盗を続けるある日、ぴよぴよ仮面の姿が一人の警察官に見つかってしまいます。
警察官の名は一ノ瀬雅臣。その場は何とか逃げることが出来て正体はバレませんでしたが、何とその一ノ瀬さんはあかりさんの部屋の隣に引っ越して来たお隣さんだったのです!

ベランダを隔てて邂逅するあかりさんと一ノ瀬さん、ついさっきまで追いかけっこをしていた怪盗と警察官、あかりさんがぴよぴよ仮面だと気づかれていませんが、何とも近い二人の距離にドッキドキする展開。
怪盗だとバレない為に一ノ瀬さんのスケジュールを手に入れようと近づくあかりさん、静かに始まった心理戦、しかし何も知らない警察官は怪盗である彼女に裏表のない優しさと逞しさを見せます。

そんな彼との交流を続ける内にあかりさんの心に小さな恋心が芽生え始めていきます。しかし彼女は怪盗そして彼は警察官、それは結ばれてはいけない禁忌の恋です。

現代の子供達が抱える色んな問題と向き合いながら、一歩づく近づく二人の距離。
怪盗と警察の宿命を背景として、果たしてこの恋愛はどの様な答えを出すのか?

軽快な話が進む中で彩られるシリアスな場面にしっとりとした大人の恋愛は読み応え抜群! おススメと胸を張って言える珠玉の作品です。
子供の味方、ぴよぴよ仮面の活躍を是非目撃してください。

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