雪、彼らの景色

それは雪の降る夜のこと。一人の樵が、陸奥の山奥にある小屋を訪れる。そこには「たるひ」という少女が住んでおり、二人は火鉢を囲んで秘密を打ち明ける……。

雪女にまつわる伝承が、この作品においては、柳田國男『遠野物語』から小泉八雲『怪談』へと繋がって、また『遠野物語』に戻ってくる。そして、さらにその向こう側にあるかもしれない、あったかもしれない絆を手繰り寄せる。物語の裏側を巡る想像力は、この作家ならではのものだ。

小泉八雲の「雪女」には、彼の心象風景が仮託されていると指摘されることがある。遠野物語に描かれたのも、雪にまつわる集合的な無意識であったかもしれない。さて、この作品で描かれる風景に、あなたは何を見出すだろうか。わたしはここに、現代特有の冷酷、逆説、真摯、そして祈りを読み込んだ。しかし、別の解釈もまた無限に成り立つだろう。あの雪景色は、それだけの懐を秘めている。

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