王宮の陰謀から逃れた姉弟が出会ったのは、愉快なマンドラゴラに魔女——?

 一年のうち数ヶ月の間、完全に実りを得られない「灰枯」と植物の成長が望める「百花」の季節を繰り返す国、フリーゼ。その国の侍従長の子供であるレーダは何やら不穏な噂を聞きつけて、弟を連れて王宮から彼らだけで逃れます。

 その彼らが辿り着いた常に灰枯の季節のような、すべてが枯れ尽くした森。そこで彼らが出会ったのは、なんだかやたらとご機嫌な叫ぶ——というよりよくしゃべるマンドラゴラと、恐ろしい魔女のゾルマでした。

 やんちゃで独善的にも見えるレーダと彼女に振り回される弟のアレックス。子供らしい無鉄砲さにどきどきしつつ、丁寧に描かれる魔女との生活、次第に明らかになる王宮と彼らの事情、そしてゾルマと彼女のしもべたちの秘密にどんどん惹き込まれてあっという間に読みきってしまいました。

 少年少女のやんちゃな冒険と成長譚であり、権謀術数渦巻くシリアスな物語でもあり、けれど最後はゾルマが圧倒的に吹き飛ばす、爽快でわくわくするファンタジーでした。

 個人的にはジークがとっても可愛いのと、エーミールがたいへん素敵な無精髭だったので、彼の過去のお話をもっと読んでみたいなあと思ったり。

 ファンタジーが好きな方に、とくに大変おすすめです!

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