その力で何をするか? 力に何ができるのか?

登場人物に繰り返し問いかけられる、「その力を使って、どうする?」と、登場人物が発する「この力があれば○○ができる」が印象的な話でした。

話は宰相が自分の理想を求め権力を奪取する為に国家転覆を企てる所から始まり、終盤にはあまりにも単純な力を崇拝する存在が現れますが、特に象徴的なのは物語の中盤のエピソードです、メインキャラクターの一人、十四歳の貴族の少女レーダは他人の持っている特殊な力を利用して束縛から逃れ自由な人生を手に入れようとします。その彼女に投げかけられるのは、利用される側の人生はどうなるのかという問いかけでした。

話を読み進めていくうちに、力は力で塗り潰し直され続けます。(例外的に絶対的な力を持つのがタイトルにもなっている魔女ゾルマです。)そして力を巡る諍いと争いの帰結である最終話とその前話からは、物語の世界にはすべてを解決してくれる魔法の力はなく、思考と対話と行動で解決への歩みを進めていくしかないという結論を感じました。魔女ゾルマの存在こそ、逆説的に「真に最強の全てを解決する力」の不在の証であったように思えます。

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