「さて皆さまお立ち会い」
妖狐妲己に神農氏、禹氏と聞けば、中国の神話世界を思い起こしワクワクしてしまう方も多いのではないでしょうか。
というと、堅いお話なのかな? と思われてしまうかもしれませんが、語り手である物語売りの語りはとても軽やかであっという間に引き込まれてしまいます。
何より主人公の小花が前向きで自由であっけらかんとしていて、迷い込んだ冥界で出会った息を呑むような美貌の武人にも、ちょっとめんどくさそうなナマズ髭のおじさんにも遠慮なくあれこれ物おじせずに率直に物申してしまうわりと——というか結構自由奔放で楽しい娘さんなのです。
綺麗な公主に何かを頼まれれば、気軽に受けてしまうような素直なところもあり、なんだかこうみんなが好きになってしまう天真爛漫さが魅力、とでもいいますか。
ともあれ冥府から舞い戻った彼女にはとある危難が待ち受けているのですが、果たしてどうやってそれを乗り越えるのか。
終盤で、それまで語られていた一つ一つの物語が全てつながって織り上げていく糸となっていたのだと気づいておお、と唸ってしまいました。
漢字の響きや字そのものの美しさ、そしてそこから浮かび上がる中華風な世界の描写の細やかさや迫力の剣戟なども見どころ。何より小花の明るさと前向きさ、そして人の想いや温かさを感じられ、元気をもらえるお話でした。