★★★ Excellent!!!
妖精(1歳/中身は三十路OL)が、冬に閉ざされた世界に春を齎す…はず! misaka
ある日、自身がプレイしていたVRMMOの世界、その妖精のアバターに転生してしまった社畜気質な女性が主人公。
周囲を極寒に囲まれた常春の箱庭(農園)経営に努めるようになる。生前得ていた花とゲームの知識を駆使しながら、主人公は箱庭という“春”を拡げ、世界を覆う雪、そして冬の寒さを溶かしていく──。
視点を変えながら一人称で描かれる本作の魅力は、コミカルに描かれる、妖精の主人公の箱庭経営の様子でしょう。突然の転生に戸惑いつつも持ち前の社畜気質が幸い(災い?)して、前向きに世界と向き合い始めます。
主人公は植物を育てることで経験値を得てレベルが上がり、少しずつできることも増え、箱庭そのもの拡がっていくのですが、その様がふわふわのほほんと描かれていて、読みやすい。
加えて、三十路OLだった主人公の独白がウィットに富んでいて、読みながらクスリとさせられます。そんなコミカルさが本作のファンシーさと相まって、非常に読みやすい“軽さ”を生んでいる印象でした。
けれども、明るく温かいお花畑な世界は主人公のいる箱庭だけ。一歩外に出ればそこは雪吹きすさぶ極寒の地で、正しく神に見放された大地。
そこから訪れるシリアス味を帯びた「来訪者」と、地球生まれの主人公とのやり取りがまた痛快で、シリアスさの中にユーモアを交えてある。おかげで物語の軽さを損なうことなく“外”と“中”のギャップが映える…
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