第4話 オオイヌノフグリ

◆雄犬?視点


おかしい。

確かに、この辺りから花の匂いがするのだが、何もなく、森の中の小さな開けた広場があるだけだ。

これほど、花の匂いがするのに?

我は、さらに辺りを嗅ぐが、匂いは強くなるばかりだ。


ゴンッ


『な、なんだ?!』

鼻先に何か当たった。

一体何だ、これは?


む、透明な壁?がある様だ。

くそ、先に進めん。

魔法なのか?

だが人間の魔法にしては、この空間は清浄過ぎる気に満ち充ちている。


人間が使う魔法は、必ず代償を求める。

強い魔法ほど酷いものだ。

だから、穢れる。

そこに怨念が残るからだ。

そして、その怨念が醜悪な魔物となり、人間どもを襲う繰り返しだ。

全く馬鹿な奴らだ。


我は尚も辺りを確認したが、この透明な壁は丁度この小さな広場の中央に、円を描くが如く展開されている。

だが円の中央には、何も無いのだ。

だれが、何の為に魔法を行使しているのか。

少なくとも、人間ではない筈だ。

人間が、こんな何もない森の奥の広場に、魔法をし掛ける理由がない。

何故なら人間は、自分達の利益になる行動しかとらないからだ。


我は、しばらくその場にいたが、何も分からなかった。


我が途方に暮れていると、何者かが森に侵入する気配がする。

く、また人間の気配だ。

仕方がない。

もっと調べていたかったが、今は侵入者を撃退するのが先だ。

また、我が守りし森を けがそうというのか。

許さん!



◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、ざっ


足音が遠ざかって行きます。

ふう、行ったようですね。

ホントにビックリしました。

オオイヌノフグリ召喚で混乱していたら、目の前に本物の雄犬のおっ…があるんです。

驚きですよ、まったく。


しかし、ハスキー犬でしょうか。

随分と白い犬でしたね。

でも、やっぱり大きいです。

私の10センチボディーからすると、某魔法使いの映画に出てくるヨダレ犬、フラッフィー並の大きさになりますね。

まあ、あの子は頭が3つでしたけど。


ただ今回の事で一つ、判った事があります。

【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の効果は、物理で安全地帯みたいです。

あの白い犬が、入れなかったですからね。

いわゆるバリアーでしょうか。


サイエンス▪フィクションですね。

まあ、私自身が異世界ここに居る事自体がまさに、SFですけど。

え?フアンタジーじゃないのかって?

ん~っ、その辺はどうなんでしょう。

異世界があると私が認識した時点で、パラレルワールドの認識ですし、アストラルボディの移動ですが、一応、次元移動ですからね。

まあ、私の存在や私の花妖精スキルが、魔法のカテゴリーに入るのであれば、ファンタジー要素になるんでしょうけど、ステイタスウインドウに魔法の文字は無かったですし、ステイタスウインドウが出る時点で、私が眠っている間に、何者かが 極秘開発したVRMMO仮想現実機に繋いだのではないかとかなど、疑念が残ります。

私、普段はのほほんとしてますけど、実は疑り深いんです。

あとはカクヨム運営に誰か、聞いてみて下さい。


さて、能書きは置いておいて、いつものヤツをいってみますか。

お約束ですが、これをやらないと、新しいお花にチャレンジ出来ないのです。



「いいかな?いいよね?それじゃあね、今から、今から始めるよ」


私は、ふわっと飛んでオオイヌノフグリの上、何もない空間からタンバリンを取り出します。


「はいよ、踊るよ、春の息吹き。あなたが咲くとみんな幸せ。私の声が聞こえたら、どうか応えて下さいな。私の幸せが、あなた幸せ、みんなで、みんなで幸せになろう。タン、タン、タ、タ、タン、タン、タン、タン。タン、タン、タ、タ、タン、タン、タン、タン」


タンバリンを叩くと、私の背中のチョウの羽から、銅色鱗粉舞い落ちて、みるみるオオイヌノフグリを包みます。

ほら、ほら、ほら、あっという間にオオイヌノフグリの、綺麗なお花が開花する。

これが私、花妖精、私だけの力です。


「ふう、上手くいきました。まあ、雑草だから手間要らずなんですけどね」


でもオオイヌノフグリの花を、間近で見るのは懐かしいですよね。

小学校の登下校以来ですか。

名前も判らない青くて可愛い花に、友達と一緒に眺めて感動したものです。

指で、摘まんだりしてましたかね。

あ、今の私の身体では、手のひらサイズになっちゃいますけど。


ところで、オオイヌノフグリの花言葉、知ってますか?

オオイヌノフグリの花言葉は「忠実」「信頼」「清らか」なんです。

花の名前の由来が酷いのに、花言葉は何か、お花にピッタリの言葉なんですね。

何とも複雑な話しです。


ざっ、ざっ、ざっ、ざっ、ざっ


あら?

また、足音が近づいてきています。

今度は、何でしょうか?

私は、息を殺して見守ります。


すると、どうでしょう?

今度は、赤い毛の大きい犬がやってきました。

でも、何だかフラフラしています。

病気でしょうか?


は?!

よく見たら、赤い毛ではありません。

これは、赤い血!

全身、血まみれのようです。

あ、さらによく見たら、この犬は先ほどの雄犬さまです。

何という事でしょう。

熊にでも、襲われてしまったのでしょうか。


ドサッ


ああ、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の前で倒れてしまいました。

この出血では死んでしまいます。

一体、どうすれば?


あ、一つだけ助ける方法があります。

この【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】は、中に居るだけで動植物の病を全て無効化、傷の回復力アップが出来るのです。

今、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の範囲を広げる事が出来れば、あの雄犬さまを助ける事が出来るかも知れません。


ピロンッ

『花妖精レベルがに上がりました』


レベルアップが来ました!

あとは、新しく召喚出来る種を代償に、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】を広げる事が出来る筈です。


向日葵ひまわりの種が召喚可能になりました』


なんと、次に召喚出来るのは向日葵ひまわり

私がベッドに狙っていた、お花です。

何という事でしょう。


うう、ここは思案のしどころです。

あの雄犬さまは、先ほどはきっと、私を襲うつもりで、この【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】に近づいたのでしょう。

であるなら、中に入れてしまうのは、私の命が危ないかもしれません。

ならば、このまま何もせずに傍観すれば、私は命が助かり、向日葵ひまわりベッドをゲットできる事でしょう。

ですが………


うう、見れば見る程、私が子供時代に飼っていた、愛犬のゴン太にそっくりです。

私が中学に上がる前に、病で他界してしまい、私は涙が止まりませんでした。

ここで保身の為にこの子を見殺しにしたら、あのゴン太に申し訳が立ちません。

雄犬さまが、私を襲わないと信じましょう。

だって、オオイヌノフグリの花言葉は「忠実」「信頼」「清らか」ですから。


ん!

私は決めました。

カーナ▪アイーハ(かなえ▪愛原)、女は度胸です。


「ナビちゃん!向日葵ひまわりの種を代償に【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の範囲拡大を要請します!」


向日葵ひまわりの種を代償に、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】範囲拡大要請を承ります。現在、拡大可能範囲は四畳半→六畳になります。実行いたしますか?』


四畳半→六畳…思ったより大きくないですね。

でも、ギリギリ倒れている雄犬さまを、範囲に入れられそうです。

雄犬さまは……虫の息です。

一刻の猶予もありません!

「ナビちゃん、それでお願いです!」


『【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の範囲拡大を受理いたしました。妖精女王ティターニアの権限により、範囲拡大を実行します』


ん?

ナビちゃん、今何て?


ギュルルルルーッ

「きゃっ、なに、なに、何なのよです!?」


突然、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の周りを竜巻が包み込み、みるみる範囲を広げます。

雄犬さまは!?

あ、大丈夫なようです。

何事もなく、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】の中に入りました。


私に出来る事はここまでです。

あとは、雄犬さまの体力を信じましょう。


あら?

何だか、急激に…眠気が襲ってまいりました…。

立っているのが、辛い…で…す。

ああ、眠……おやすみ…なさ……。


ZZZZZZZ




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


皆さま、わたくし、カーナのお話しを見に来てくれて、ありがとうございます。


今後も、私の独りよがりな、恥ずかしい私生活を公開して参りますので、何卒、今後も御贔屓ごひいきの上、応援お願い致します。


なお、ハートや、お星さまを沢山付けて頂けますと、私の生活も充実いたしますので、宜しくお願い致します。

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