第3話 チューリップ

◆とある何者かの視点


ザクザク、ザク


この匂い、懐かしい花の匂い。

久しく嗅いだ事はなかったが、間違いない。


我が神が、戦争ばかりする人間達に嫌気がさし、この世界、アーデ▪ラテーナを離れてどれ程経ったであろうか。

我は、神の眷属としてこの森を任され、森に生きる者達の長として、この地を守り続けてきたが、我が神に見捨てられたこの世界は、見捨てられた時から、季節を刻むのを止めてしまった。


永遠の冬の世界。


それは、全ての者に過酷であった。

我が守るこの森でさえ、冬の寒さに全ての花園は消え、そこに生きる昆虫や鳥、美しかった者達は次々と消えていった。

あとに残ったのは、醜悪な魔物と魔法石で春を作り出した人間達のみ。


だが馬鹿な人間達は、こうなっても、なお、その僅かな春を作り出す魔法石の取り合いの為、今も争い続けている。

こうなったのが、お前達人間の、その争いのせいだと、未だに理解できぬのだ。


そして、この我が守り続ける森に生きる、僅かな我が眷属や魔法石を求め、今もこの聖域を犯さんと森に侵入してくる。


だから我は許さぬ。

この森に侵入する、全ての人間を駆逐する。

この森は、我が神から任された土地。

例え神が見捨てた地であろうと、我は神との盟約を たがえぬ。


そして、この花の匂いが万が一、神の帰還に繋がる事であるなら、我は、この命を賭としても、その全てを守らねばならぬのだ。


しかし何処だ?

先ほど迄感じていた匂いが、今は途切れている。

我の勘違いであろうか?

いや、我の鼻には無い。

日が落ちてから、まだ深夜と呼ぶには早い時間、確かに先ほどまで匂っていた花の匂いが、たった今、途切れたのだ。

なんの前ぶれも無く…。


何処だ、何処にいる?

我が命を賭として守るべき者よ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



あーたらーしい新しい朝がきた。

きぼー希望あーさーだ。

喜びに胸をひーらけ開けおーおぞら大空仰げ…


腕を回します。

外回し、内回し、5、6、7、8

1、2、3、4、5、6

胸の運動

足を開いて横ふり

斜め上

5、6、7、8

1、2、3、4、5、6…


ひぃ、地面に寝てましたので、身体が バッキンガム宮殿ばっきばきです。

朝のラジオ体操は、必須ですね。


さて、今日も頑張ってレベルアップを目指します。


ああ、此方に来てずっと一人なので、独り言が多くなりました。

誰もいない時間を過ごすのが、大変心苦しく、こうやって居もしないに解説しながら、心の中で思っているだけです。

だから、そこの想像上の、気にしないで私の戯言を聞いていて下さい。


昨日咲かせたガーベラの隣に、ゲットしたチューリップの球根を植えます。

え、近すぎないかって?

だって、仕方がないじゃないですか。

四畳半、四畳半しかないんですよ、この花壇。

過密になるのは、当たり前です。

あまり端に植えると、私のおトイレを掘り起こさないと、いけなくなりますよ。

レベルアップすれば、【小さな箱庭グリーン▪サンクチュアリ】も大きく出来るはずですので、ガーベラとチューリップには、其まで我慢して貰います。


ところで、チューリップに種があるのをご存知でしょうか?

実はチューリップは、種があるんです。

咲いた花の雌しべに花粉がつき、受粉すると雌しべのサヤの部分が大きくなり、2カ月ほどすると茶色く変色します。

そのサヤの中にできるのが、これらの種なのです。

皆さんの中で、ああ、か、と分かる方も多いかと思います。

これを秋にまくと翌年春には芽を出し、ネギの苗程度に育ちます。

この球根を植えると、今度は少し大きい球根がとれます。

これを繰り返し、5年目に初めて花が咲くことになるのです。


意外と気の長いお花なんですね。

ちなみにチューリップの品種は、現在6千種以上あるそうです。

凄いですね。

6千種ですよ、6千種!

やっぱりこれは、チューリップ大国、オランダの品種改良が大きいですね。


さて、チューリップの育て方はと、教えて、ナビちゃん!

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日当たり▶日当たりが良く、風通しのよい場所に植え付けます。チューリップの生長には、ほどほどの寒さと日光、適切な水分が必要です。

温度▪▪▶球根の根が伸びる最適温度は10~15℃くらいが良いようです。

土▪▪▪▶ 水はけが良く有機質にとんだ土に植えましょう。球根を植える際は、植える方向に注意しましょう。尖ってる方を上、平らな方を平行にすると良いでしょう。

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ん~、チューリップ球根の成育温度、ちょっと低くありません?

ほどほどの寒さってなんですか、ほどほどの寒さって。

私、冷え症なんですよ?!


はあ、まあ何とかなるでしょう。

じつは私の鱗粉の効果に【成育空間システム化】があります。

これはどういう事かというと、咲かせるお花の僅かな周りだけ、成育環境を整える効果があるんです。

保護幕で守られている様なものでしょうか。凄いですね。

だから季節に関係なく、生育環境の違うお花を、隣どうしで育てる事が出来るのです。

例えば、チューリップの隣に向日葵ひまわりとかですか。

スポットクーラーならぬ、スポットビニールハウスですかね。


ふむ、ふむ、それでは、これを踏まえてチューリップの、【成育空間システム化】。


「いいかな?いいよね?それじゃあね、今から、今から始めるよ」


私は、ふわっと飛んでチューリップの上、何もない空間からタンバリンを取り出します。


「はいよ、踊るよ、春の息吹き。あなたが咲くとみんな幸せ。私の声が聞こえたら、どうか応えて下さいな。私の幸せが、あなた幸せ、みんなで、みんなで幸せになろう。タン、タン、タ、タ、タン、タン、タン、タン。タン、タン、タ、タ、タン、タン、タン、タン」


タンバリンを叩くと、私の背中のチョウの羽から、銅色鱗粉舞い落ちて、みるみるチューリップを包みます。

ほら、ほら、ほら、あっという間にチューリップの、綺麗なお花が開花する。

これが私、花妖精、私だけの力です。


咲いたチューリップは、黄色のチューリップでした。

黄色のチューリップの花言葉は、「望みのない恋」、「名声」。

………。


いいわ、いいのよ。

どうせ、私は彼氏いない歴、年齢のしがない社畜…。

レベル上げ名声狙って、高みを目指すわ!

おーほっ、ほっ、ほ。


ちなみにチューリップの花言葉は、花の色で違います。

皆さんも、調べて見ると良いでしょう。


ピロンッ

『花妖精レベルがに上がりました』


やりました。

レベルが上がりました。

次なる召喚可能な種は一体、なんでしょう?

とっても、わくわくです。

向日葵ひまわり、こい、こい。

ベッドの生る木でもいいやです!


『オオイヌノフグリの種が召喚可能になりました』


……え?

今、なんと言いました、ナビちゃん???

『オオイヌノフグリの種が召喚可能になりました』

………???!


「はいーーーーーーーーーーーーーっ!?」


『オオイヌノフグリの種が召喚可能になりました』

『オオイヌノフグリの種が召喚可能になりました』

『オオイヌノフグリの種が召喚可能になりました』

『オオイヌノフグリの種が召喚可能になりました』

『オオイヌノフグリの種が召喚可能になりました』


「ギャあああ、ストップ、分かった、分かりましたよ、ナビちゃん!」


ヤバいです。

ナビちゃんが、壊れたみたいです。

まさか、オオイヌノフグリを召喚可能にするとは!?

私は地面に両手をついて、落ち込みます。


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【オオイヌノフグリ】

オオイヌノフグリは道のかたわらや、あぜ道などに生える雑草です。

春先に咲かせる小輪の青い花は、儚なげで繊細な美しさを感じますが、雑草なだけにとても繁殖力が強いです。

放っておいても育てられるので、初心者におすすめですが、繁殖のしすぎに注意しながら育てましょう。

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…ようは、ただの雑草です。

ガーベラ、チューリップときて、何故にオオイヌノフグリなのでしょうか。

流れ的に次は薔薇とか、百合とかではないですか!?


ところで皆さん、オオイヌノフグリの名前の由来、ご存知ですか。

実は、オオイヌノフグリの由来は、種の形が雄犬のフグリ(陰嚢)に似てる事から、この名前が付けられたと言われています。


いわゆる、雄犬さまのフグリ、お尻の…。

ひぃ、いくら私が三十路間近のOLだったとしても、今は可憐な花妖精の美幼女。

こんな事、私のお口が腐ってしまいます。




そして私が見上げた先には、大きい白い雄犬さまが、私にその、お尻を向けてシッポを上にあげておりました。

そして、そのフグリをしっかりと、乙女な私に、これでもかと、お見せしていたそうで御座います…。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


皆さま、わたくし、カーナのお話しを見に来てくれて、ありがとうございます。


今後も、私の独りよがりな、恥ずかしい私生活を公開して参りますので、何卒、今後も御贔屓ごひいきの上、応援お願い致します。


なお、ハートや、お星さまを沢山付けて頂けますと、私の生活も充実いたしますので、宜しくお願い致します。

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