3. 新居 「嫁に欲しい……」

 妹の胸でギャン泣きしてしまった……。

 恥ずかしすぎる‼︎

 でもまぁ……


「ありがとう、玲奈」

「いやいや、お兄ちゃんに胸を貸すのは妹としての義務ですから。で、どうだった?」

「どうだったとは?」

「胸の感触だよ‼︎か・ん・しょ・く‼︎」


 なるほど……めっちゃ答えづらい質問だな。

 これはどう答えても気まずくなる自信がある。

 仕方がない、ここはぼかしたりせずに素直に答えるとするか。


「まぁそのですね……一言で言えば、天国でした」

「ふむ、素直でよろしい」

「誰だよお前」

「「ふっ、フフフ、ハハハハハハ。」」


 このやりとりが可笑しくて、二人で笑ってしまう。


「いや〜こんな笑ったのいつぶりだろ」

「……お兄ちゃんは何かしたいことある?」

「ん〜。とりあえず誤解を解きたいかな〜。手伝ってくれるか?」


 周りの人達に俺は柚乃を襲ったのではなく、助けたのだということをわかってもらいたい。


「(お兄ちゃんが私のことを頼ってくれることがこんなに嬉しいなんて……。)もちろん‼︎」

「頼りにしてるぞ」

「頼りにされました‼︎」


 玲奈はほんと、いい子だよな。

 嫁に欲しい……っていかんいかん。

 何を考えてるんだ俺は。

 考えないようにするため、ここは無理矢理にでも話を逸らそう。


「玲奈は俺が柚乃を襲ってないってよく信じたよな」

「さっきも言ったけど、私はお兄ちゃんがそんなことするはずないって信じてるから」

「ありがとな、玲奈」

「どういたしまして、お兄ちゃん」


 玲奈がいい子過ぎてツラい……。(2回目)


「じゃあまた明日学校で」

「お兄ちゃん、今から荷解きしにいくんでしょ?」

「そうだけど」

「私も行く(2人でも住めるかどうか見ておきたいし……)」

「別にいいけど。……じゃあ、新居へ行くとするか」

「うん‼︎」








 ___

 ________


 お〜、ここが俺の新しい安らぎの地。


「お〜、ここがお兄ちゃんの新しい安らぎの地」

「フッ、やっぱり兄妹なんだな、俺達」

「どゆこと?」

「なんでもないよ。……それにしてもかなり広いな。一人で住むには大きすぎる気がするんだが」


 リビングは普通の大きさだが、お風呂は2人でも入れそうなほど広い。キッチンも食器洗い機があるし、物置もある。寝室に至ってはベットが2つ入りそうだ。本当に一人用か?


「2人だとピッタシの大きさだね」

「んー?一緒に住んでくれる人がいたらだけどな」


 まぁ、こんな俺なんかと一緒に住んでくれる人なんてそうそういないだろうけど……。

 ん?俺なんか???俺なんもしてないのに犯人扱いされてるんだから、堂々としててもいいんだ‼︎なんか元気出てきたぞ‼︎

 丸のHPが回復したところで、玲奈からとんでもない爆弾が投下された。


「じゃあ2人で住んじゃう?」


 ほぇ?

 フタリで、ふたりで、2人で、

         ……って、えぇぇぇぇぇぇ‼︎


「そそそ、そういうのはだ、ダメなんじゃないか?」

「どうして?」

「どうしてってそれは……」


 玲奈に理由を聞かれて、言葉に詰まってしまう。


「……な〜んてね、ちょっとからかい過ぎちゃった」

「本当に勘弁してくれ。今の絡みは童貞にはきつい」

「へぇ〜。お兄ちゃん、童貞だったんだ〜」


 妖艶な笑みを浮かべている玲奈に、ドキッとしてしまう。


「そそそ、そんなことどっちでもいいだろ」

(私にとってはかなりの重要案件なんだけどなぁ〜)

「ん?なんか言ったか、玲奈」

「なんでもないよ〜。ほら、サクッと荷解き終わらせちゃおっか」

「そう言えばそれが当初の目的だったな」

「も〜、お兄ちゃんってば忘れっぽいんだからぁ〜」


 鼻につく言い方にイラッとする。


「玲奈が二人で住もうとか言うからだろ‼︎」

「他人のせいにしたらだめだよ、お兄ちゃん」


 イライラッ。


「他人にせいにするとかじゃなくてだな、『お兄ちゃん、口を動かす前に手を動かしてよ。』このっ‼︎……ふぅ」


 落ち着け、落ち着くんだ俺。

 怒らな〜い。

 イライラしな〜い。


「ぼーとしてないでさっさと手を動かして。今日中に終わらないよ。」

「ウンソウダネ。」

     

 考えることをやめた人間の末路が見えた話であった。






 ___

 ________


 それから1時間ほどして、荷解きは完了した。


「ふぅ〜、終わった終わった」

「おい、玲奈は俺の漫画とラノベを読み漁ってただけだろ」


 そう、玲奈は途中で荷解きに飽きたらしく、俺が本棚にしまった漫画やラノベを見て『へぇ〜、お兄ちゃんこんなの読んでるんだ〜』とか言って、読み漁っていたのだ。

 手伝うって話はどこにいった‼︎


「チッチッチ。兄者よ。細かいことを気にしてたら俺みたいなビックになれないぜ」

「いちいちムカつく言い方だな。てか、誰だよ」

「私、そろそろ帰るね」

「お前マジで何しに来たんだよ‼︎」

「えっ、遊びに来たに決まってんじゃん。って言うか私一回も手伝うなんて言ってないよ」


 そんなはずは……あるが、あの文脈だと普通は手伝ってくれると思うだろ‼︎もう、こいつのペースに合わせるのはやめよう。


「お兄ちゃん、じゃあまた明日学校でね」

「オウ、マタアシタ」







 次回『学校①』

 柚乃を襲ったという噂で持ちきりの学校。

 丸は乗り切れるのか⁉︎

 ヤバい宗教団体も登場⁉︎

 お楽しみに‼︎


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