5. 学校② 「誰だお前‼︎」

「すぅ……『ちょっと待てぃ‼︎』何?お兄ちゃん?」


 玲奈が息を深く吸い込んだ時に俺は止めに入った。

 なぜかって?玲奈があの爽やかイケメン君のメンタルをズタボロにする未来が見えたからだよ‼︎

 いや、ちょっと違うな。それ自体はいい、というかむしろウェルカムなんだが、玲奈のキャラが崩壊しそうになってたので止めた、の方が正しい。あと、玲奈の悪評が立つのは良くないしな。


「それはダメだ」

「なんで?」


 先程までのヤンデレオーラ(?)が嘘のように、可愛らしくコテンと首を傾げる玲奈。


「お前が学校でいづらくなるかもしれないだろ?」

「今更な気もするけどね?」

「それについては本当にすまん」


 そうだ。俺の、犯罪者の妹ってだけで周りはいつも通りに接してくれないのだろう。それに何やら憶測で勝手に守ろうとしてくるヤバい集団……。


【妹ちゃんを犯罪者から守る会】とか、

【妹ちゃんを犯罪者から守る会】とか、

【妹ちゃんを犯罪者から守る会】とか、な‼︎


「まぁ、元から可愛い私はいつも騒がれてたから、これまでよりちょっとうるさくなった程度だけどね。」


 玲奈は自信たっぷりに言う。この自信はどこから来るのだろうか?ちょっとでいいから分けて欲しいくらいだ。


「玲奈は本当にすごい自信家だよな。足元を掬われないように気を付けろよ」

「おい‼︎君達、僕がいることを忘れているだろ‼︎」

「あ゛ぁぁん‼︎今会話中なんだよ‼︎静かにしてろ‼︎」 

                  

 玲奈は、いつもの陽気な姿からは想像もつかないような口調で言った。


「玲奈、抑えて抑えて。キャラが狂ってるから」

「だって、せっかくお兄ちゃんとの会話の時間が……」


 う、嬉しすぎる……。

 玲奈が、俺との会話を大事にしていたなんて……。


「だから君達、僕がいることを忘れているだろ‼︎」

「あ゛ぁぁん‼︎今、感動中なんだよ‼︎静かにしてろ‼︎」

                   

 丸は、いつもの温厚な姿からは想像もつかないような口調で言った。俺の感動の瞬間を邪魔する奴は誰だ‼︎


「お兄ちゃん抑えて抑えて。キャラ、狂ってるから」


 ふぅ……なんかデジャブったな。玲奈の気持ちがすごいわかったぞ。だが、俺は年上として冷静に対処せねばなるまい。

            

「誰だお前‼︎」

「ついさっきまで会話していた【妹ちゃんを犯罪者から守る会】の会長だよ‼︎というか分かりにくすぎるボケは必要ないから‼︎」

「あぁ、爽やかイケメン君か。完全に忘れてたわ。というか今のネタ、よく分かったな」

「そんなことより、妹さんを解放しろ‼︎」


 はぁ、マジで懲りないな、コイツ……。流石に面倒臭くなってきたぞ。コイツのことスルーして昼飯食べに行くか。


「玲奈、お弁当食べに行こっか」

『おい‼︎スルーすんな‼︎』 

    (←皆様もスルーして下さって結構です。)

「うん‼︎」

『だからスルーすんなって‼︎』

「どこで食べたい?」


 これまでもこの質問をしてきたが、毎回答えは決まっている。


「いつも通り、屋上でいいんじゃない?」

『だからスルー……もういいや』


 屋上である。俺か犯罪者扱いされる前から玲奈は、人気がないこの場所を好んでいた。


「そうだな」

「あっ、私はちょっと用事があるからお兄ちゃんは先に行っといて」

「用事?手伝おうか?」

「いや、いいよ。ただの掃除だから」

「あ〜なるほど〜」


 全てを理解した。俺はそこらへんの鈍感主人公とは違うのだよ。


「俺は先に行くけど、言葉遣いには気をつけてな」


 そう言い残して、俺は教室を去る。

 しばらくして後方から魂が抜けるような音がしたが、おそらく気のせいだろう…‥気のせいだ‼︎









 ___

 ________


 屋上で玲奈を待つこと数分。


「お兄ちゃん、お待たせ〜」

「オーバーキルしてないか?」

「大丈夫だよ」


 玲奈と話していると、なんと爽やかイケメン君がやってきた。


「お前スゲェな。呆れ通り越して感心するわ。その執念、別のとこに回せよ」

「君、妹さんにあんなことを言わせるなんて……許されることじゃないぞ‼︎」


 あんなこと?


「あんた、あそこまで言ってまだメンタル的に生きてたの?凄いわね」


 あそこまで?


「おい、玲奈よ。コイツに何を言ったんだ?」

「………………」

「めっちゃ気になるんだが……」


 いや、マジで何を言ったんだ?


「その話はやめろ、やめてくれ‼︎……頼む」


 爽やかイケメン君が膝をつき、項垂うなだれて言った。どうやら、玲奈に相当なトラウマを植え付けられたようだ。俺が直々に慰めてやろう。


「ドンマイッ‼︎」

「慰めになってねぇよ‼︎」

「復活早っ‼︎」

「僕、いや僕達【妹ちゃんを犯罪者から守る会】は必ずお前という魔の手から妹さんを救い出してみせるからなぁー‼︎」


 そう叫びながら爽やかイケメン君は走り去っていった。ともあれ、嵐は去った。


「玲奈、仕切り直してお弁当食べるか」

「そうだねって言いたいところだけど、残念ながらもう予鈴が鳴るよ」


【キーンコーンカーンコーン】


「……もしかして、あと5分で授業が始まっちゃう?」

「もしかしなくてもそうだね」

「マジか……」


 ……思い返してみれば、俺たちがお弁当食べ損ねたのってあの爽やかイケメン君のせいじゃね?


 許すまじ。

 この世の全てのイケメンは消え去るがいい。











 次回『蝸牛』

 俺は……見てしまった。

 玲奈が殺しをしている現場を……。

 お楽しみに‼︎


 公開時間、何時がいいか分からん。

 リクエストがあったら、言ってねー。

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