11. 全貌 「あれって陽の集団の罰ゲームでしょ?」 

「貴方を嵌めた理由の前に私の計画を話してあげましょう」

「そんなにペラペラと喋って大丈夫なのか?」

「貴方と私の信用度、どちらが高いか分かりきったことだもの」


 確かに。俺が何かを言ったところで、皆は柚乃の肩を持つだろう。だから、俺は静かに聞くことにした。


「………………」

「懸命な判断ね…… 」


 そして、柚乃は話し始めた。






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 ____


 私の丸への復讐のシナリオはこうよ。


 まず、そこに立っている探偵を雇って、強盗の役を演じてくれって頼んだの。初めは渋られたけど、報酬を倍にすると言ったらすぐにOKを貰えたわ。

 あとは丸の下校時間に合わせて探偵に私を襲わせる。丸は必ず私を助けてくれる、絶対に。


(だって、丸は優しいもの……そう、私が好きになった優しさ)


 その優しさを利用するのは心が痛むけれど、どんな手を使ってでも復讐すると誓ったもの。こんなことでは諦めるわけにはいかないの。


 探偵には予め、丸から多少の攻撃を受ければ刃物を捨てて逃走するように言っておいた。おそらく丸は気絶した私を放って行けない。

 そして、丸が近くに来た時に目を開け、悲鳴をあげて逃げる。これで丸が犯罪者扱いを受けるようになる。






 __

 ____


「……終わりよ。どう?」

「………………」

「フンッ‼︎ショックで言葉が出ないようね」


 いや、確かに柚乃に騙されていたことはショックだが、玲奈のおかげであんましダメージなかったんだよなぁー。ってそういや、玲奈を助けに来たんだった。


「玲奈は関係ないのに、なんで玲奈を攫ったんだ⁉︎」

「……ねぇ、玲奈が貴方と一緒に下校しない理由を知ってる?」


 柚乃がなんの脈絡もなくそう聞いてきた。どういう意図があるのかはわからないが、相手の方が立場が上である以上は付き合うしかない。


「そんなの部活とかだろ?」

「玲奈は部活はしていないわよ。」

「……今はそんなのどっちでもいいだろ‼︎さっさと解放しろよ‼︎」

「いいえ、関係あるわよ。玲奈はねぇ、下校中に『ちょっと待ったー‼︎』……玲奈、貴方起きていたの?」


 寝ていたはずの玲奈が柚乃の言葉を遮った。







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 __________


 私、新鞍玲奈はお兄ちゃんが突撃してきた時点で既に起きていた。なんか、私を攫った2人が喧嘩しててなかなか言い出せなかったんだよねぇ〜。あと、起きてるのが気づかれたら面倒臭そうだったし。


 でも、私がお兄ちゃんのことを撮影してるってバレたら重度のブラコンだってこともバレちゃう。そしたら、キモい奴って思われて嫌われる。そんなのはヤダ。だから、柚乃ちゃんの言葉を遮った。

 

 ってか、今更だけど、お兄ちゃんよくここ突き止められたよね。すごいわー。

 しかも、黒幕がまさかの柚乃ちゃんとはねー。なんでお兄ちゃんのことを嵌めたんだろ?まぁ、理由がなんだったとしても、絶対に許さないけど。

 とにかく今は私から論点をずらさないとねぇ〜。






 _____

 __________


 玲奈はさっきまで寝ていたはずなのに……。


「私のことより、なんでお兄ちゃんのことを嵌めたのか教えて欲しいな〜」

「そうだ、それは俺も気になってた」

「……ちょうど1年前よ。それで思い出しなさい」

「ちょうど1年前……あっ、なるほどぉ〜。柚乃ちゃん、いくらなんでもそれは逆恨みが過ぎるんじゃないかな?」


 玲奈が何か、心当たりがあるようで、意味深な笑みを浮かべながそう言った。俺には全く見当もつかない。ちょうど1年前にあったことと言ったら……何もないな。マジでなんなんだ?


「すまんが俺には全くわからん」

「嘘でしょ⁈」

「お兄ちゃん、それは流石にそれはないわ〜」


 柚乃はショックを受けた様に言い、玲奈は少し……いや、かなり引いた様に言った。

 俺、そんなに大切なことを忘れてんの?だが、覚えてないものは覚えてないのだから、しょうがない。


「本当に思い出せないの?」

「あぁ、すまん」

「はぁ……仕方がないから教えてあげるわ。ちょうど1年前、私は貴方に告白したの」

「告白?」


 告白告白告白……って、あれか‼︎あの嘘告。

 結局、ネタバレ無かったけど。


「どう、思い出したかしら?」

「あぁ、思い出したよ。あの嘘告だろ?」

「う、嘘告?」


 柚乃が声を裏返らせて言った。俺、なんか変なこと言ったかな?


「え?だってあれって陽の集団の罰ゲームでしょ?」

「……玲奈はこんな兄を持って大変ね」

「基本的には優しくていいお兄ちゃんなんだけどねぇ〜」


 褒められたのか、貶されたのかわからん。

 どっちなんだ?


「つまり、貴方はあの告白を嘘告だと思っていたと……」


 柚乃が眉間を押さえながらそう言う。


「そうだが、ってそうじゃないのか?」

「……わかったわ。もう一度あの時のことを思い出しましょう」


 そうして俺は、記憶が薄れかけている1年前のことを思い出そうとした。









 次回『過去』

 ついに告白の瞬間が明らかに⁉︎

 お楽しみに‼︎

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