取り戻したいものなあに?

 既に多数の方が魅力的なレビューをされている中で何をいまさらと思う方もいるかもしれませんが、このレビューの筆者なりに考えた本作の魅力を伝えさせていただきます。お付き合い頂ければ幸いです。

 まず、世界観やホラー×少女&半妖といった要素に注目されたレビューがちらほら見受けられたので、それとは別の切り口から。
 本作ではキャラクターに関する情報が事細かに描写されており、一人一人のキャラクターの外見から仕草のひとつひとつに至るまで、魅力的に描き出されています。主人公のはなびちゃんはもちろんの事、彼女が出会う事になる友人や知人達…中でも序盤から登場する直文に関しては、ふとした仕草や見た目の描写が抜かりなく行われており、作者様のキャラクター達に対する愛情を感じます。

 そしてその描写の細かさは怪異達相手でも変わらず。作中に登場するあやかしのおどろおどろしい実態が、キャラクターに対するそれと同じくありありと綴られています。一度読めば、キャラクター達に降りかかる災いがまるで我が身のことのように感じられることでしょう。

 そんな怪異事件と併せて語られるのが、名前を失った少女(通称”はなびちゃん”)と彼女が出会った青年・直久の物語。
 時間とやり取りを重ねながら強まる二人の想いと、明かされていく過去、抱えていた感情……王道的ともいえる二人の関係性ですが、丁寧な段階を踏んで発展していく二人の関係は、思わず見守りたくなる微笑ましさがありました。
 ホラーかつシリアスな場面が印象としては強いかもしれませんが、この二人、および二人を取り巻くキャラクターたちもそれに負けないくらい魅力的なキャラクター揃いです。どんな展開、キャラクターが待ち受けているのかは、このレビューを読んだ方の目で確かめてみてください。

 長くなってしまいましたが、最後にひとつだけ。
 お話の大きな区切りである第一章『花火の少女』は必見です。

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