常道を進む。それゆえの面白さ

 地の文や話運びから伺える本作の印象は、地道かつ誠実なもの。他のレビュワーの方がおっしゃられている通り、そこが本作の魅力と呼べる部分なのは疑いようがありません。

 それを象徴するように、主人公である八重垣紫苑は慎重さと観察力を兼ね備え……一方、彼女を取り巻くクラスメート達や異世界の住人は一癖も二癖もあるキャラクター達ばかり。先述した誠実な地の文とのギャップで、彼ら彼女らの魅力が否応なく感じられる事は間違いないでしょう。
 各キャラクターに与えられた『贈り物』という能力も個性的で、ある意味その能力自体がキャラクターの掘り下げに繋がっている点は、読んでいて見事と感じざるを得ませんでした。

 戦闘シーンも徹底して堅実な描写が行われ、かつ場面場面の臨場感も損なわない、リアリティのある筆致で描かれています。
 ファンタジーなのにリアリティ……?と思う方もいるかもしれませんが、これに関しては是非、このレビューを読んだ方自身が本作品を読み解いていく過程で体感してもらいたいと思う所存です。

 長々と語ってまいりましたが、一人でも多くの方にこの作品の魅力が伝われば幸いです。
 まずは一話、この物語の始まりを覗いてみてはいかがでしょう?

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