八重垣紫苑(やえがき・しおん)、陰キャのセクシーお姉さん(本人は否定)
題名に偽りなしで、主人公は地道に歩みます。
チートの能力を貰っていても、冒険には出ないし、訓練も始めちゃうし、お金の心配もしちゃうし……。
本当に現代の女子高生がそのまま、異世界に転生したかのようです。
それが、逆に物語にリアリティを与えています。
文章も本人語りで進んでいくため、主人公に感情移入しやすく、ときには歯がゆい思いをしても、
「いや、そうだよな」
と、主人公に納得させられちゃいます。
後半になると一気に冒険が進んでいき、冒険譚に相応しい内容になっていきます。
仲間との協力、確執も物語の見所の一つ。
それでも、協力することの素晴らしさを随所で感じることができると思います。
地道に進む冒険譚だけど、内容は地味じゃなくキラキラ輝いています。
是非一読することをお勧めします
地の文や話運びから伺える本作の印象は、地道かつ誠実なもの。他のレビュワーの方がおっしゃられている通り、そこが本作の魅力と呼べる部分なのは疑いようがありません。
それを象徴するように、主人公である八重垣紫苑は慎重さと観察力を兼ね備え……一方、彼女を取り巻くクラスメート達や異世界の住人は一癖も二癖もあるキャラクター達ばかり。先述した誠実な地の文とのギャップで、彼ら彼女らの魅力が否応なく感じられる事は間違いないでしょう。
各キャラクターに与えられた『贈り物』という能力も個性的で、ある意味その能力自体がキャラクターの掘り下げに繋がっている点は、読んでいて見事と感じざるを得ませんでした。
戦闘シーンも徹底して堅実な描写が行われ、かつ場面場面の臨場感も損なわない、リアリティのある筆致で描かれています。
ファンタジーなのにリアリティ……?と思う方もいるかもしれませんが、これに関しては是非、このレビューを読んだ方自身が本作品を読み解いていく過程で体感してもらいたいと思う所存です。
長々と語ってまいりましたが、一人でも多くの方にこの作品の魅力が伝われば幸いです。
まずは一話、この物語の始まりを覗いてみてはいかがでしょう?
「地道に歩む」というタイトルが示しているように、地に足の着いた誠実な物語です。
異世界転移物ですが、安易なチートを振りかざす作風ではありません。
主人公は自分で陰キャだと認識している少女、紫苑(しおん)。
彼女は思慮深く、石橋をたたいて渡るタイプ。
理路整然とした思考がきちんと書かれているので、全体的に落ち着いた印象です。
物語もゆっくりと進んでいきます。
クラス転移物ですが、安易ないじめやざまぁを描いたものではありません。
クラスメイト一人一人に明確な個性が与えられ、各々が性格にあったスキルを持っています。
彼らのスキルは転生時に自ら望んだ『贈り物』なので、それぞれの性格や考え方が反映されているんです。
異世界に場所を移しても、自分の力を見極め、時には異なる能力を持った人々と協力しながら生き抜いていく――そんな異世界召喚冒険譚はいかがでしょうか?
RPG×異世界転生という鉄板要素に総勢30名のクラスメイトが付いてくるという衝撃展開。各登場人物について、どのように個性を吹き込んでいくのか、どのように独自の世界観を構築していくのか、非常に気になります。
最初の数話は良く言えば丁寧な、少々厳しく言えば冗長な設定説明が続くので、ここでリタイアする人も多いかもしれないです──僕もここいらで手が止まっていますが、何やら不穏な雰囲気も漂ってきているので今後の展開に期待しながら読み進めたいと思います……!
余談ですが、自身が通っていた高校のクラスメイトの顔を思い浮かべながら、彼らと一緒に異世界転生を強いられたと想像するとゾッとします。たぶん僕は特定の友人グループの中で固まって行動を共にしようと考えるため、クラスは空中分解するんだろうなーと。この物語に登場したクラスメイト達は果たしてどうなるのか、その点にも注目して読み進めると面白いかもしれませんね!