入場口はあちらです。

既に何人もの方が魅力的なレビューを書いている中、今更自分が何を書く必要があるのかと無駄にその必要性を問うてしまいましたが、今だけは無視して続けます。

起承転結のしっかりした物語は、ご覧になった事があるでしょうか。

タイトルを声に出して読んでみれば分かる通り、この作品は全裸のホームレスを拾って、脅迫されて、映画作りを頼まれるお話です。
ついでに言えばそのホームレスのキャラクターは死にそうらしいのでさあ大変、序盤の時点で渋滞を引き起こしそうなものですが、本作は違いました。

主人公であるロジオンとヒロインであるハレヤのやり取りが軽妙で小気味よく話が進み、彼らの目的が明示された瞬間からこの物語は劇的に動き出します。そう、目的です。

映画を作り、世界を変える。
軸が通っているからこそ出来上がる起伏が本作の魅力であると、私は思います。

キャラクターに関しては他のレビューを見ても分かる通り魅力的、ですがそこに映画製作という事情が加わる事で見え方が二転、三転するという部分が本作の面白いところ。誰しもが善人ではなく、悪人でもない。清濁併せ持ったキャラクター達のやり取りはそれだけで駆け引きを生み、映画のワンシーンのようなドラマを呼び込みます。

文章にも無駄がありません。必要な情報や描写はしっかりと行いつつ、テンポ感と情報量のバランスがほどよく吟味されています。一話当たりの文章量も平均して2000~3000字程度と、軽すぎず重すぎないボリュームなのも個人的には嬉しいポイントでした。

長々と語らせて頂きましたが、どれだけ文章を綴ってもレビューで用意できるのは作品への入り口のみです。でももしかしたら、本作はそれで十分なのかもしれません。

映画のいいところは、席に着くだけで物語を楽しめる事ですから。

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