人類最古の眼鏡の、長い旅の果て

元船乗りの硝子職人によって作られた人類最古の眼鏡である主人公。彼を作ったガラス職人は、船の上から灯台を眺めるのが好きだった。この始まりがラストを華々しく彩っている。

イタリアからコレクター、盗賊、競売人の手を渡り日本に来た眼鏡。日本人の少女とイタリアの本を読み郷愁に浸っていると、戦火に巻き込まれ、フリマに並び、ある少年の手に渡った。彼は、腐りかけた木製のフレームから銀縁眼鏡に生まれ変わらせてくれたのだ。この描写が眼鏡が歩んできた歴史の長さとこれからの新たな人生(物生?)を表現していて、とても好きです。鼻あてに木が使われていたことも、少年が物を大切にする人物であることを示していて素敵でした。

そして眼鏡が見たラストが、もうっ……!

眼鏡という人ではない存在から見た人間の歴史や奥ゆかしさが新鮮で、壺や花瓶、工具とのやり取りも思わずクスッと笑ってしまいます。

敷き詰められた文字の圧を感じさせないキツネさんの言葉選びのセンスに素直に脱帽です。

短編っていいな、と改めて感じさせられる素敵な作品でした。眼鏡男子女子の諸君、コンタクト派も裸眼の方も、ぜひご一読ください!

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