元船乗りの硝子職人によって作られた人類最古の眼鏡である主人公。彼を作ったガラス職人は、船の上から灯台を眺めるのが好きだった。この始まりがラストを華々しく彩っている。
イタリアからコレクター、盗賊、競売人の手を渡り日本に来た眼鏡。日本人の少女とイタリアの本を読み郷愁に浸っていると、戦火に巻き込まれ、フリマに並び、ある少年の手に渡った。彼は、腐りかけた木製のフレームから銀縁眼鏡に生まれ変わらせてくれたのだ。この描写が眼鏡が歩んできた歴史の長さとこれからの新たな人生(物生?)を表現していて、とても好きです。鼻あてに木が使われていたことも、少年が物を大切にする人物であることを示していて素敵でした。
そして眼鏡が見たラストが、もうっ……!
眼鏡という人ではない存在から見た人間の歴史や奥ゆかしさが新鮮で、壺や花瓶、工具とのやり取りも思わずクスッと笑ってしまいます。
敷き詰められた文字の圧を感じさせないキツネさんの言葉選びのセンスに素直に脱帽です。
短編っていいな、と改めて感じさせられる素敵な作品でした。眼鏡男子女子の諸君、コンタクト派も裸眼の方も、ぜひご一読ください!
本作の主人公は眼鏡である。眼鏡っ娘ではない、眼鏡そのものである。
それも、そんじょそこらの代物ではなく、人類最古の眼鏡の視点で物語は描かれている。
彼は様々な人物の手に渡る。生みの親の船乗りや買い取った商人、博物館で展示されていた彼を盗んだ泥棒、とある国の姫君などなど……。
そうしてその眼鏡を通して、色々な人々が自らが見たい風景や書物、あるいは人間を見ていく。
それらが結びつき最後に交わる様は、圧巻の一言に尽きる!
無機物故の物の感じ方、捉え方を見事に描かれている本作はまるで芸術品のよう。
ラストの締め方も素晴らしく、今までの運命とこれからの未来を感じさせる素敵なオチである!
このレビューが目についた方は、是非とも本作をご覧いただきたい。
10分もかからずに読めてしまう、けれど2時間以上の映画を見終わったような、とても満足の行く読後感が貴方を待っていることだろう――。
人類最古の眼鏡。ヒトの手で生み出された発明品や芸術作品は、いつもその先鋭的なデザインやアイディアから『悪魔』と評されることもある。
この物語は、そんなとある眼鏡が世界各国、様々な時代や人の間と運命を綱渡りしていく様子が眼鏡自身の視点で語られてゆくというもの。
冒頭の一文でなんだこれは……!? とガツンとやられ、眼鏡の語りに吸い込まれていくかのように読んでしまう。
人ではない彼が語る、彼の出逢ったニンゲン達。
視えにくいものを、より視えるようにするために生まれた彼が、視えないもの。
時代を重ねていく度に、眼鏡に宿っていく何かを読者も共に感じられるようで……。
温かい未来が見えるようなラストの展開も必見です。
さぁ眼鏡とともに眺め、まばたきをしてみよう。
果たしてその発明品は、本当に『悪魔』だったのだろうか——。