数奇な運命を渡り歩く。悪魔と呼ばれし眼鏡はかく語りけり

 人類最古の眼鏡。ヒトの手で生み出された発明品や芸術作品は、いつもその先鋭的なデザインやアイディアから『悪魔』と評されることもある。

 この物語は、そんなとある眼鏡が世界各国、様々な時代や人の間と運命を綱渡りしていく様子が眼鏡自身の視点で語られてゆくというもの。
 冒頭の一文でなんだこれは……!? とガツンとやられ、眼鏡の語りに吸い込まれていくかのように読んでしまう。

 人ではない彼が語る、彼の出逢ったニンゲン達。
 視えにくいものを、より視えるようにするために生まれた彼が、視えないもの。
 時代を重ねていく度に、眼鏡に宿っていく何かを読者も共に感じられるようで……。

 温かい未来が見えるようなラストの展開も必見です。
 さぁ眼鏡とともに眺め、まばたきをしてみよう。
 果たしてその発明品は、本当に『悪魔』だったのだろうか——。
 

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