吸血鬼の領主と身代わりの花嫁

　東の国から両親とともに西の土地に流れ着いたシュエシは、流行病で両親を失ったあと土地の者たちに育てられていた。その土地には昔から娘を領主の花嫁として差し出す慣わしがあるが、花嫁となった者は誰一人として姿を見せることがない。そのため領主は娘を売り払っているのか、はたまた生贄として食らっている化け物ではないかという噂があった。そのため娘を持つ親はなんとかできないかと暗い顔をする。
「随分と昔のことじゃが、領主様は東の国のものならなんでもお好きじゃと聞いたことがある」
　最年長の婆の言葉に、土地の者たちは名案だと手を叩いた。こうして土地の者でも若い娘でもないシュエシは娘の代わりに花嫁として領主に差し出されることになった。
　これまで育ててもらった恩を返さなくてはと思っていたシュエシは、たとえ相手が…続きを読む