技巧的でありながら幻想的

 架空の民族の架空の風習が話の骨子なのだが、工夫をしていなければ、アイデア倒れに終わっていただろう。
 それを防いだのは、セマザサ族を研究している学者の視点から描くことで、話に奥行きを持たせたこと、そして、個人的に高く評価したいのは、固有名詞の選択。
 作者が自分で考えたのか、何かを参考・加工したのかはわからないが、固有名詞に引っかかることなく読めるようにしたのは、作品の完成度を高めるうえで、とても大切なことだったと思う。
 刺繍の内容が散文詩で説明され、それを学者が読み解く。話はその繰り返しで進むが、詩を自分で解釈してから、学者の「解説」を聞くと、読む楽しさが増すように思う。

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