文化を感じる。土地を感じる。人生を感じる。息遣いを感じる。

日記のような役目を果たす布を持つ民族の話。
架空のお話でありながら、その文化のリアリティがすごい。
海を越えて、大地をゆけば、どこかの山や川を過ぎたそこに、その民族は確かに存在する。
そんな質感をもった、ある種圧倒されるお話でした。

内容は基本的に、布を順番に読み解いていくだけ。
しかしそこに人生が詰まっており、その生涯に思いをはせることができます。
登場する単語から、この文化圏がどんな土地にあるのか、そういった風土も想像でき。
山がある。雪が降る。鳥が来て、花が咲くらしい。
海に類する単語は見られないから、きっと山がちな土地なのだろう。
その中で、育ち、祭祀を行い、病を乗り越え、愛し、愛され、見送り、見送られる。
つづられる人生の、なんと色彩豊かで濃密なことか。

そしてこの布を読み解く、語り部の存在。
この布の持ち主と、どのような関係性であったか。
筆舌尽くして語るわけではないけれど、布に縫われるその指遣いが、雄弁に物語る。

総括。厚み、すごいっすね?
4000字弱でこの読み応え、ちょっとこれは魂が震えました。
手を伸ばせば何かに触れられそうな豊かな質感の物語、ありがとうございました。

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