ファンタジーを愛する子どもだった全ての大人に――届け、この輝く闇!!

妥協を許さない、鍛え抜かれた筆力!!

まず目に飛び込んできたのは、これです。

天体や気候といった莫大なものから描写を始めているというのに、風の流れや気温、人物のわずかな目の動きまで、丁寧に、しかし決して冗長ではなく描き出す描写力がゆえに、この恐ろしくも美しい世界が目の前にありありと立ち現れてくるんです。

魔法による破壊という、この世にありえない事象を、かくも肌に迫る圧を持って描けるものだとは。

圧倒されたら、もう手遅れ。

気が付けば、人の命が軽く、悪が跋扈するこの残酷な世界で、押し流されそうになりながらも必死で抗おうとする人々の姿に、惹きつけられてしまっています。

私がこちらの作品でもっとも好きな部分は、強大な力を持つ存在を、いかにただの人間たちとかけ離れた高位者であるか雄弁に語りながらも、そんな彼らですら「心」持つ者として、その躊躇いや胸の痛み、優しさを、丁寧に書いてくれていることです。

どんな暴虐の嵐のなかにあっても、どんな人知を超えた力を持ったとしても、人はどこまでも人なのだと。

作者様の温かい人間観が垣間見えるようで、とても胸を打たれます。

果てしなく広がる、重厚な闇。

だからこそ、必死で生きる命が強くかがやく。

容赦のない世界観、息をつかせぬプロット、創作言語まで作り出したバキバキに練り上げられた設定、気高くも愛くるしい魅力的な登場人物。

2周3周と読んでしまうこの読み応えに、「そうそう……読書ってこういうものだったよ!!」と、古の本好きは間違いなく満足できるはず。

しかし、読めば読むほど…この世界に転生したくはないと、強く思いますね!笑
魔術も魔霊鬼も、何なら人間も、おっかなすぎます。
秒で死ぬ自信しかありません。

古の幻想世界が、生身の人間がそのへん歩いていたら即死んでいたような、非常に過酷な魔境だったことも思い出させてくれる物語。

かつてファンタジー小説を夢中で読む少年少女だった、すべての大人に届いてほしい大傑作です!!

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