第3話・破綻

 -V-作戦は大きな問題を抱えていました。

 連邦・ジオン両軍に派閥が生まれ、意見統一ができなかったのです。


 レビル将軍は地上を無人にする事自体は賛成だったものの、地球の破壊には反対だったようです。

 彼が選んだ道は虐殺でした。

 おそらく『地球上の半分以上が焦土と化しても、人類さえいなくなれば時間をかけて生態系の再生ができる』という考え方で、種の保存とか細かいところではなく、地球が放射能汚染されず存続できればいいようです。

 その理由は、彼が高齢だったから。

 ホワイトベースを降りたがった老人たちのように、レビル将軍も地球で死にたかったのです。



 ここでジオン首相が病死し、レビル将軍が動きやすい状況が整いつつありました。

 後を継がされたデギン公王は、子供たちの手を汚したくない、何も知らないまま恒星間移民船に乗せてやりたいと考え、あるいは地球で死にたかったから、代わりに地上の人間を一掃してくれると言うレビル将軍の甘言に乗ってしまったようです。


 デギン公王の手引きでレビル派がダイクン派を抹殺、しかしジオンの遺児たるキャスバルとアルテイシアは‐Ⅴ‐作戦の実権を握っているため殺せず、デギン公王の手先として使う事になりました。

 傀儡同然とはいえキャスバルとアルテイシアがジオンの裏ボスになった以上、バランスを取るためにヤシマ家の当主も暗殺した模様。



 キャスバルが仮面をつけた理由は、シャア・アズナブルとしてアクシズ落としを主導する立場だったからです。

 赤いモビルスーツは『真っ赤なウソ』だから。

 そして『撃ってはいけない機体』の目印。

 地球を破壊したら仮面を外し、アルテイシアと同じ恒星間移民船に乗る予定だったと思われます。


 対してアルテイシアはフラナガン機関の裏ボス。

 ただしシャアほど忙しい訳ではないのでサイド7に出向、連邦とジオンが共同開発中のガンダム・ガンキャノン・ガンタンクの視察を行い、連邦側の代表者であるミライさんと共に、計画の調整を行っていました。

 もちろん医学生なんて真っ赤なウソ、医学の知識はゼロなので、医務室ではなくブリッジに定住していました。


 ハヤトは連邦側の諜報員でミライさんの手下……ただしレビルのスパイでミライさんの監視役と思われます。

 フラウに正体がバレるのを恐れて大人しくしていたものの、隠れ蓑にリュウを使ったせいで、実は味方だったランバ・ラル隊の全滅という甚大な被害を出しています。


 カイはジオン側の工作員でデニム隊の引き込み役、セイラさんの部下です。

 大根役者なハヤトと違ってプロのスパイで、ミハルとの接触やカツレツキッカの育成など大活躍しています。


 アムロは新型モビルスーツ開発責任者テム・レイの息子なので、-V-作戦の全貌を最初から知っていました。

 テム・レイの派閥は不明。



 なおブリティッシュ作戦ですが、どうやら本来はダブリンのコロニー落としと同じトリックが使われる予定だったようです。

 大量のジェットエンジンでコロニー内部の空気を抜いて比重を軽くし、ちょっと硬くて巨大な風船を落とすように、被害を最小限に抑えて行われるはずだったと推測します。

 しかしレビル将軍とデギン公王の裏切りによりコロニーは崩壊、巨大な先端部がシドニーを直撃し、地上の人口を半分にするという甚大な被害を出しました。

 これが意図的な破壊だったのは、資源小惑星ではなくコロニーを落した事でわかります。

 どう考えても小惑星の方がいいじゃんソロモンとかア・バオア・クーとかルナツーとかあるんだから。

 わざわざ膨大な予算と資源と手間暇かけて作ったコロニーを落す理由は、トリックくらいしか考えられません。

 最初のコロニー落としは、あらゆる意味で失敗したのです。



 なおレビル将軍の正体は、フラウ・ボウのお爺ちゃんです。

 シャアのように名を騙りヒゲで素顔を隠し、何も知らないフラウに虐殺の件を知られたくないと内心ビクビク、ホワイトベースの面々に脅迫された挙句、ララァに洗脳されて折れました。


 なお本来は移民船として造られたペガサス級ですが、ジャブローの1番艦ペガサスは本来の姿で温存され、2番艦ホワイトベースは……おそらくベルファストのドックで空母(強襲揚陸艦)に改装されたようです。

 艦長のパオロはレビルの裏切りとオデッサ作戦の真相を知り、サイド7での任務を狙ってシャアとの接触を計った模様。

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