第25話・木星戦役その2

 木星圏を味方につけたクロスボーン・バンガードは修理を終えて出発、ドゥガチのジュピトリス9を追います。


 本来ならテテニスはここでお役御免、木星圏の面倒を見なくてはならないのですが、ドゥガチとカラス先生は地球圏で死ぬ気だと気づいた彼女はマザー・バンガードに乗艦、正体を明かしてクルーになりました。

 木星帝国の前身(の半分)である木星船団公社は海賊たちにとってコスモ貴族主義をメチャクチャにした怨敵ですが、ベラ艦長の宣言でテテニスの安全は保障されます。


 しかし、わかっていないフリをする人物がいました。

 10年経ってもガンダムの口を開けられない未覚醒ニュータイプ、ザビーネです。

 彼の反乱は想定内なので、ここはトビアがフォロー。

 艦内に爆弾を仕掛けるあたり、さすがカラス先生の弟子といったところでしょう。


 ザビーネは艦内の不穏分子を一掃し、モビルシップ・ジビアと死の旋風デス・ゲイルズ隊を呼び込み、船足が早すぎるマザー・バンガードのマストを再びへし折らせました。

 ジュピトリス9との合流が早すぎてもダメだったのです。


 戦闘中にジビアへと着艦するザビーネにとって、キンケドゥの死は絶対に避けるべき事態でした。

 クロスボーン・バンガードで唯一の覚醒ニュータイプであるキンケドゥ(シーブック・アノー)には、ベラとの間に子供を作って欲しいから。

 ニュータイプ至上主義のコスモ貴族主義を唱えるコスモ・バビロニアの誰もニュータイプとして覚醒できなかったので、シーブックとセシリーは唯一の希望だったと思われます。

 覚醒済みニュータイプは、そこまで貴重な存在だったのです。

 ザビーネにとって国なんかどうでもよく、ベラに覚醒したニュータイプを生ませるのが目的でした。

 ガンダムの口も開けられない自分自身など、ニュータイプの楽園を作るための生贄いけにえになっても構わないと思っています。


 それでもザビーネがカラス先生たちの攻撃を妨害しなかったのは、キンケドゥにガンダムの口を開けさせるためでした。

 もう何年も本気を出していないキンケドゥにかつを入れるためです。

 これはトビアの覚醒にもつながるので、カラス先生と死の旋風隊もグルになってます。

 うまく行けばドゥガチの血統にも覚醒済みニュータイプの血が入るから。


 そしてトビアはカラス先生が異母妹のために選んだ婿候補でもありました。

 ドゥガチが用意した婿候補ギリも覚醒させようと参戦させたものの、前兆すら見せてくれないのでトビアが最有力候補です。

 ここらでトビアとテテニスには仲良くなってもらおうと、カラス先生は二人をジュピトリス9へとさらいガンダムX2を奪わせました。

 ちょっと年くったキューピッドです。


 なおテテニスはドゥガチとカラス先生を説得するために残り、コア・ファイターで飛び出すトビアを見送りました。

 地球侵攻が茶番なのは百も承知ですが、これから起こる父と異母兄の死を食い止めたかったのです。


 そうそうトビアがマザー・バンガードに帰還できた理由ですが、コア・ファイターに観測データと予測進路が入力されていたからです。

 仕込んだのはカラス先生で、死の旋風隊もグルで協力しています。

 機械工学科のトビアに航法がわかる訳ないでしょ!


 マザー・バンガードの進路上を張るのがどれだけ難しいかは、海賊船がジュピトリス9より高速で航行した場合の航路を考えれば理解できるでしょう。

 ジュピトリス9は太陽の周りを回るように航行し、マザー・バンガードが快速を生かして軌道の内側をショートカットする軌道を描く事になって……考えるだけで頭が痛くなりますよ。

 なにせ加速のタイミングだけで軌道が変わるので、何のデータもなく進路上に漂流するのは不可能です。

 富野監督は重度のSF者なので、軌道計算……は避けたとしても、その難しさを無視するなんてありえません。

 地球から宇宙に出たらワープするのがスペオペ者で、軌道計算を始めるのがハードSF者。

 富野監督は後者なので、ちゃんとそれなりに考えてストーリーを組んでます。


 あとジュピトリス9を脱出したトビアは、ニュータイプとして覚醒していました。

 おそらくテテニスの頬キスが原因です。

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