第19話・シャアの反乱

 宇宙世紀0089、-V-作戦のフィナーレであるアクシズ落としの期限が迫っていました。

 まだ地上には大勢の一般市民が残っていますが、これ以上は恒星間移民船の準備を整えつつある木星船団公社が黙っていません。

 そこでシャアとアムロは共謀し、計画を骨抜きにしようと画策したのです。



 アデナウアー・パラヤは二重スパイでした。

 地球連邦の政治家として地球破壊計画に協力しつつ、アクシズに移送するはずだったルナツーの核爆弾の一部を、カムランたちコロニー公社を通じてロンド・ベルに流したのです。


 アデナウアーはシャアとアムロのスパイ狩りを支援するため、インドのニュータイプ研究施設で強化した娘のクェスを潜入させ、ロンド・ベルとネオ・ジオン双方に存在する木星船団公社のスパイを洗い出します。


 クェスのサイコ捜査でチェーン・アギが容疑者として浮上、ネオ・ジオンではナナイ・ミゲル……と見せかけてギュネイと腹芸をり広げました。ナナイさんは味方です。

 ただしクェスはスパイの洗い出しができるだけで二重スパイの区別はできず、父アデナウアーを抹殺してしまいました。

 クェスは父親がスパイだから嫌っていたのに、親バカのアデナウアーは人工ニュータイプお得意の腹芸だと思っていたのです。


 なおこの時代のモビルスーツは全てバイオセンサーを装備しています。シロッコが木星圏から持ち込んだバイオセンサーは人工ニュータイプを量産し、強化人間を時代遅れな存在に変えてしまいました。

 だから『俺は強化人間だ!』と叫ぶギュネイをレズンは鼻で笑うのです。



 ケーラはアストナージに接近してサイコフレームの情報を探っていたスパイでした。

 何か有益な情報を得たらしいケーラはリ・ガズィで出撃、ギュネイと接触したところでアムロに追いつかれます。

 アムロはフィン・ファンネルの誤作動と称してケーラを抹殺し、アストナージには適当に誤魔化しました。



 サイコフレームにはサイコミュ機能だけではなく、超高性能な演算能力がありました。

 コックピットのシートに座って考えるだけで、複雑な軌道計算ができてしまうのです。

 アムロとシャアはνガンダムとサザビーのサイコフレームをリンクさせ、戦いながらアクシズを爆破分割するタイミングを計算していたのです。

 ブライトさんは爆弾を設置しただけで、そのタイミングはアムロに一任されていました。

 シャアは主に軌道計算を任されています。


 なおシャアとアムロはアクシズの一部を地球に落下させ、核の冬にするつもりでした。

「地球にはちょっと休んでもらうのさ」

 レビル将軍たちの暴走で破壊の進んだ地球環境にフィフス・ルナとアクシズを落とすのは痛手ですが、地上の人間を追い出し核汚染と偽って立ち入り禁止にすれば、最大百年くらいは誤魔化せます。

 それどころか核の冬なんて本当に起こらなくても移民計画の口実になりさえすればいいのです。

 その茶番がバレる前に全人類を木星圏に送り、恒星間移民船で出立させる計画でした。

 これやっとかないとララァの呪いが解けないから!



 チェーンは機銃座でネオ・ジオンのオールドタイプエース、レズン・シュナイダーを撃墜してしまい、あまりにもあり得ない戦果に腰のT字サイコフレームを疑いました。

 そしてサイコフレームの出処でどころがネオ・ジオンと知り、シャアとアムロの計画を察知、妨害しようと壊れたリ・ガズィで出撃したところをクェスに見つかったので誤射に見せかけて抹殺、その報復でハサウェイに殺されます。


 チェーンはサイコフレームに残留思念を残せず、クェスの思念に追い出されてしまいました。

 クェスの思念を乗せたサイコフレームはアクシズに向かいます。

 T字サイコフレームで引き続き思念を送り続けたので、アムロとシャアは彼女が死んだ事に気づいていません。



 ギュネイを抹殺したアムロはサザビーと戦闘、頭部を破壊して脱出カプセルを奪取しボディをわざと残します。

 秘儀モビルスーツ空蝉うつせみの術!

 残した機体をナナイさんに回収させ、シャアを死んだ事にする計画だったのです。


 サイコフレームはコックピットに装備され非電源でも動作するので、カプセルさえ無事なら軌道計算は可能です。

 アムロはシャアの脱出ポッドをアクシズに埋め込み(物理)、正確な軌道計算ができるように固定。

 シャアの計算によるとアクシズの落下予測地点がマズい。

 演出的に、おそらくミライさんたちや避難民がいる荒野と思われます。

 ジオン首相たちが計画した-V-作戦は一般市民の虐殺を禁じているので、絶対に避けなければならない軌道です。


「ガンダムで押し出してやる!」


 アムロは逆噴射でアクシズにブレーキをかけ、少しでも落下地点をズラそうと奮闘、サイコフレームで意思が伝わってしまった連邦とネオ・ジオン双方のパイロットたちが賛同し、共に逆噴射をかけます。

 ラー・カイラムの軌道計算では速度の足りないアクシズが落下する・・・・・・・・・・・・・・・・とモニターに表示されたので、見間違いでも演出の都合でも作画ミスでもなく逆噴射しました。


 ナナイさんは「大佐の命が吸われていきます……」と腹芸。

 ちょっとタイミング早すぎ。


 そこにクェスの残留思念が到着、サイコフレームを暴走させてしまい、全てのモビルスーツに搭載されたバイオセンサーによるサイコ多数決で、地球は破壊されない事になってしまったのです。

 おかげで‐Ⅴ‐作戦は完全に失敗、後世に禍根かこんを残してしまいました。

 木星船団公社もカンカンです。



 なおシャアとアムロは死んでいません。

 軌道計算しながらサイコ密談でサイコ親権争いをしていた2人を目の当たりにしたクェスが死なせる訳がありません。


「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ(じゃあクェスのママはララァって事でいいよな?)」

「お母さん? ララァが?(お前まだ洗脳解けてないんじゃない?)」


 そんな会話を聞いたら助けたくなるのが人情ってもんですよ。

 助けようとして大変な事になっちゃったんですけどね。



 余談ですが、機動戦士ガンダム第1話でアムロがガンダムに乗った理由は、フラウの両親を殺したガンダムの破壊と-V-作戦の頓挫とんざなので、成就し罪をつぐなったらフラウの元へ行くのが筋でしょう。

 クェスのおかげで不本意にも成就してしまったのです。


 シャアはあくまで-Ⅴ-作戦の裏ボスなので、アクシズが壊れ失敗に終わりネオ・ジオンが解散したら、もう権力なんてありません。

 おとなしくセイラさんの元へ行くのが筋でしょう。

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