8.誕生日はフルコースで。

 夜遅くまでガラスの片づけをしていたせいだ。翌朝、俺は九時頃ようやく起床した。

 起き出した俺は一階に下りたが、キルもまひるもいない。キルがフクロウの抱きこみ業者を呼んでくれたおかげで、リビングの窓は直っている。

 ばあちゃんがリビングで掃除機をかけていたので、問いかけてみた。


「キルとまひる、どこ行った?」


「まひるはお友達のところへ出かけたわよ。キルちゃんはその護衛? って言ってたわね」


 ばあちゃんがにこっと微笑む。まひるの護衛というが、シエルの話によれば、無常組はもういない。そんなに警戒する必要はないのではないか。

 でも無常組の構成員以外にもまひるを付け狙う奴はいるかもしれないし、先日の不審者のような単なる危険人物もいるかもしれない。キルが警戒してくれる分にはありがたい。


 今日はケーキ作り本番だ。昨晩のように失敗しないように、もう一回練習しようかな、などと考える。と、ばあちゃんが掃除機を止めた。


「咲夜、お誕生日ね。おめでとう」


「ん、ありがと」


 わざわざ言われると、少し気恥ずかしい。


「ばあちゃんも、フクロウ創設記念日、おめでとう」


 フクロウの活動は殺人行為なので全然賛同できないし、お祝いの言葉を投げかけるのも癪だったが、俺は大人なので挨拶代わりに言った。ばあちゃんがふわっと嬉しそうに笑う。


「ありがとう。咲夜からその言葉を聞ける日が来て嬉しいわ。去年までは、フクロウの存在すら知らなかったものね」


「知りたくなかったよ。まして、創立記念日と自分の誕生日が同じとか、なんかやだ」


「あら。咲夜が生まれるよりフクロウが創立した方が先なんだから、あなたの方が合わせてきたのよ」


 ばあちゃんがいたずらっぽく意地悪を言う。俺だって意図して合わせたわけではないが、たしかに自分の方が後なので、なにも言い返せなかった。ばあちゃんがにこにこ微笑む。


「咲夜が生まれた日、家族みんな、大喜びだったのよ。この記念すべき日に生まれた子だから、将来はきっとサニ超えの最強のアサシンになるって」


「誕生当時からそんなこと言われてたの、我ながらかわいそう」


「それなのにこんなに優しい子に育っちゃって、どうしたものかしらね」


 出自が呪われているが、なに不自由なくきちんと愛されて、「命を大切に」と繰り返す母に育てられたからこうなった。母さんのおかげでまともな倫理観を持てたのは、不幸中の幸いだった。

 これ以上この話をしても複雑な気持ちになる一方なので、俺は話題を変えた。


「今日のフクロウのパーティ、ばあちゃんも行くんだって?」


「そうね」


「危ないことはしないでね」


「大丈夫。私を誰だと思ってるの? フクロウの総裁よ」


 ばあちゃんがほんわかした雰囲気のまま、気高い貫禄を見せる。


「昨日の夜、シエルから無常組が壊滅したと報告があった。ちょうどいい機会にちょうどいいネタが降ってきたわ。面白いことになるねえ」


 暴力団、無常組の壊滅。それはキルと親父にとって思いがけない好機だった。

 いや、人がたくさん亡くなっているのだからこんな言い方はしたくない。だが日原さんの監視係であり、キルを牽制する無常組がいなくなれば、キルは圧倒的に動きやすくなる。俺も、下手に命を狙われなくなる。

 しかしほっとしていられるわけではない。キルが自由になったということは、日原さんの身が危なくなるのだ。どちらにしても気が休まらないのが、俺の立ち位置である。

 わくわくしているばあちゃんに、俺はまた念押しした。


「ともかく、気をつけて。ばあちゃんは総裁でももうお年寄りなんだし、暗殺者なんか、なにするか分かんないんだからな」


「ふふ、心配してくれてありがとう。ちゃんと自分の力量の範囲で、咲夜を困らせない程度にやるから安心なさいな」


 底知れない感じを残して、ばあちゃんは掃除機がけを再開した。


 *


 まひるは昼食も友達の家でお世話になるらしい。キルがいつ帰ってくるか分からないが、こちらは昼は出来合いの惣菜でも買って、夕飯はなにを作るか、買い物しながら決めようと思う。ケーキの材料も買い足しておこう。そんなことを考えながら、秋めいてきた町を歩く。日差しは暖かく風は涼しい、心地のいい天気だ。

 日曜日の商店街は人の流れもそこそこ多く、賑やかだった。今日はケーキ作り以外に予定はないし、買い出しを済ませたら自宅でのんびり過ごそう、などと考えていたときだった。

 スマホが震えて、メッセージアプリの通知が入った。日原さんの名前と、彼女からの短い言葉が表示されている。


「こんにちは、急にごめんね。今日、これから会える?」


「えっ!?」


 つい、商店街のど真ん中で思い切り声を出した。


「いいよ。でも買い物があるから、あんまり長くはいられないかも。今どこにいる?」


 と返事を打つ。気持ち悪いほどの即レスをしてしまったのを後悔したが、彼女も返事を待っていたのだろう、すぐに次のふき出しがついた。


「商店街の書店さんの近く」


「俺も今、商店街にいる。そっち向かうよ」


 学校のアイドルを図らずとも独占してしまった。先日の映画といい、なんだか本当に彼女の特別な人になったような気がしてしまってよくない。友達のひとりであることを、きちんと自覚しなくてはならない。


 と、そのとき、しまおうとしたスマホが再び震え出した。今度は電話の着信だ。見ると、キルの通信機の番号からである。

 それを見て思い出したが、キルは今、無常組という目の上のたんこぶがいなくなって日原さんを狙いやすくなった。だというのに、なにも知らない日原さんは、こうしてひとりで外を歩いていたわけだ。俺が彼女に会いにいくのは、日原さんを護衛する面でも有効だ。


 スマホはまだ、ムームーと小刻みに震えている。応答すると、キルの元気な声が、電話口から聞こえた。


「やっと出た! なあサク、お前もうちょっと外で遊んでろ」


「なんだ急に」


「さっき自宅に電話したらおばあちゃんが出て、サクは買い物に出かけたって言ってたからさ。そのまま三時くらいまで戻ってこなくていいぞ。あ、ケーキは作れよ」


「いや、だからなんでだよ。昼ごはん、買って帰ろうと思ったのに」


 一方的に用件を押し付けられ、俺は少しむっとした。だがキルの態度は変わらない。


「お昼なんて外で食べてこいよ。おばあちゃんにも私から伝えとく。分かったな? 帰ってきたら今日はお前の誕生日兼、命日になるぞ」


 言いたいことだけ言うと、キルは通信を切った。

 お願いの仕方が物騒でかわいげのない奴だ。しかし言うことを聞かずに帰ってくれば理不尽に怒られそうなので、ここは素直に、時間を潰そうと思う。買い物に行く前でよかった。行ったあとだったら、食材を持ったまま帰れなくなるところだった。


 日原さんと会う用事ができたのも幸運だった。三時までは潰せないが、多少は時間を使える。

 数分もすると、書店の前に出た。この商店街の書店は、古い小さな個人商店である。その古めかしい建物の前に、つややかな黒髪の少女が佇んでいる。彼女は俺に気づき、ひらひらと手を振った。


「朝見くん。ごめんね、急に呼び出して」


「ううん。でもどうした? 珍しいな」


 日原さんからこんなふうに唐突に呼び出されたのは、初めてだ。日原さんはどきっと身を強ばらせて、目を泳がせた。


「あー、えーっと……そう。書店さんに、小説を買いに行こうと思って」


 なぜか少し返事を詰まらせたあと、彼女は妙に饒舌になった。


「この前観た映画の原作小説、読みたいんだ。映画とは展開が違うんだって」


「へえ。読んでみようかな」


 本を読む習慣はないが、これは読んでおこうと思った。生憎映画はほぼ観ていないが、原作を読んでおけば、日原さんと話を合わせやすくなる。観ていたふりにも限界があったので、渡りに船である。

 日原さんは少し間を置き、切り出した。


「でも、朝見くんが来る前にお店を見たんだけど、なかった。ご主人に聞いたら、置いてないって。残念」


「そっか。まあここ、店主が趣味で本を仕入れているような店だからなあ。映画になるような話題作だし、もっと大きい書店に行ったらあるだろうな」


 それで、俺を呼んだ用件はなんだったのか。切り出すのを待っていると、日原さんはまたなにか言いかけて呑み込み、目線を漂わせた。


「朝見くん、買い物があるって言ってたよね。あんまり引き止めない方がいいかな」


「それがさ、キルが三時くらいまで帰ってくんなって言うから、まだ時間あるんだよ。急にそんなこと言われてもな」


 半ば愚痴みたいに言ったら、日原さんはぱっと顔を上げた。


「そうなの? じゃあ時間ある? 予定は空いてる?」


「う、うん」


 俺は胸のざわめきを堪え、頷いた。日原さんは少し言い淀み、きゅっと、俺の袖を引っ張る。


「それじゃ、近くのお店で、一緒にお昼食べよう?」


 なんだろうか。今日は随分と積極的だ。

 なぜだ。俺が誕生日だからか。それは日原さんは知らないはずだから関係ないが、なんだか今日は、そういう運が冴えている日なのだろうか。

 ちょうど無常組がいなくなってキルが狙っているかもしれないし、日原さんの傍にいられるのは都合がいい。理由はもちろんそれだけではないが、断る道はなかった。


「なにか食べたいもの、ある?」


 聞くと、日原さんは嬉しそうに答えた。


「えーっとね、行ってみたいお店があるの」


 *


 お嬢様である日原さんのご要望の店は、格式高い高級店……などではなく、商店街から少し外れた場所にあるハンバーガーのファストフード店だった。フェアの商品のポスターがでかでかと掲示されているのを見て、日原さんは目を見開いていた。


「すごい! これテレビのCMで見るやつだ。おいしそう」


 ご機嫌な日原さんはいつも以上ににこにこしていて、かわいい。


「もしかして日原さん、ファストフード初めて?」


「うん! だって食事はシェフが作ってくれるし、外食するときはこういうお店じゃないから。学校の帰りに買い食いなんかもできないし」


 そんな漫画の中のお嬢様みたいなこと、本当にあるのか。耳を疑ったが、暴力団を使った監視や政治家との関係、そもそも暗殺者に狙われるような環境などを考慮すれば、ファストフードを食べたことがないのくらい、おかしくない気がしてきた。

 ハンバーガーとポテトのセットを注文し、席で待機する。日原さんはそわそわと周囲を見渡して、時々俺に視線を戻して、またそわそわする。


「ファストフード、クラスの友達は学校の帰りに来てて、羨ましいなって思ってたの。放課後、自由に楽しく過ごす、青春の象徴ってイメージがあって。私もいつか、友達と行ってみたかった。他の子と同じように、自由になってみたかったんだ」


 日原さんは、陸のところの店で両親に内緒で惣菜を買うだけでも大冒険になる子である。ファストフードも、彼女にとっては大きな関門のひとつだったのかもしれない。


「その貴重な第一回が俺でよかったの?」


 冗談交じりに聞くと、日原さんは案外真剣な顔で頷いた。


「うん。朝見くんは、私が選んだ人だから」


「なんて?」


 日原さんが俺を「選んだ」? 聞き間違えかと思うようなフレーズだが、たしかに今、そう言った。日原さんがまばたきをする。


「今までは、友達として傍にいさせてもらえるのは、お父さんが紹介してくれる友達だけだった。それでも、その子のことも大好きだし、楽しいんだけどね。お父さんが選んだんじゃなくて、私が選んだ最初の友達が、朝見くんなんだ」


「あ、そういう……いや、それでも光栄なんだけど」


 一瞬舞い上がった自分を、心の中で殴る。日原さんは気恥ずかしそうに言う。


「お父さんの言うとおりにしていれば、家族に心配かけなくていいから、一生それでもいいかなって思ってたんだけどね。お父さんの紹介じゃない朝見くんが話しかけてくれるようになってから、世界が広がって見えたの。私には知らないものがいっぱいあるけど、この人についていけば、いろんなものを見せてもらえるんじゃないかって。だから……」


 日原さんはまた、店内を見回した。


「だから、このお店は、君に教えてほしかったの」


 大切に育てられた姫が、町へ繰り出してお転婆をする。日原さんと行った映画のあらすじだ。彼女が今日、原作を捜していたその作品。なんだかそれが、今になって、日原さん自身と重なった。


 レジの上のディスプレイに、番号が表示される。自分たちの受付番号だったそれを見て、俺は一旦席を立った。日原さんは自分で受け取りに行くとは知らなかったようで、驚きながらついてきた。


 日原さんの俺への感情は多分、恋とか、そういう俺にも分かりやすいものではない。

 安全な場所にいる自分を、どこかへ連れ出してほしい。そんな背徳のような期待で、俺に身を委ねている。自分でも、ちょっと分かる。たしかに俺なら、危ない遊びを教えたりはしない。刺激的すぎず、閉鎖的でもない、ちょうどいい塩梅なのだ。


 トレイを受け取って席に戻る。ジャンクフードに目を輝かせる日原さんは、嬉しそうな反面、悪いことでもしているかのようにそわそわしている。これが日原院長やその奥さんにバレたら、日原さんだけでなく、俺までめちゃくちゃ怒られそうだ。

 俺もハンバーガーをひと口、齧った。ケチャップの塩気やチーズの濃い味付けが口の中でひとまとまりになる。繊細な味ではないけれど、これが癖になる。日原さんは初めて口にする味に驚きつつも、楽しそうに食べ進めていた。夢中になる表情が、ちょっとだけキルみたいだ。

 俺は一旦ハンバーガーをトレイに置き、ポテトに手を伸ばした。


「日原さん、本当は今日、俺になにか言おうとしてない?」


 俺の問いかけに、日原さんはむぐっと、咀嚼を止めた。俺はポテトを口に運ぶ。


「勘違いだったらごめん。けどなんか、なにか言いたげに見えた」


 急に誘ったり、目当ての本がなくてもあんまり気にしていなそうだったり、こうして昼もご一緒したりとか。なにかあるのかな、くらいには察しがつく。日原さんは照れ笑いをして、食べかけのハンバーガーを下ろした。


「鋭いー……。そのとおりです。本当は相談したいことがあるんだけど、なかなか言い出せなかった」


「やっぱり」


「書店さんで落ち合って、本をきっかけにしてさらっと伝えるつもりだった。でも上手くいえなくて、こうして引き伸ばして、お昼まで誘っちゃった」


 なんか変だと思ったら、そこからもう変だったのか。日原さんはオレンジジュースをひと口飲んで、改めて切り出した。


「私、転校するの」


「え……」


 胸の奥が、きゅっとした。


「いつ?」


「本当は、今すぐにでも。でも、私、文化祭が楽しみだったから、お父さんに無理言って文化祭までは引き延ばしてもらった」


 日原さんが下を向く。


「どこの学校になるかとか、具体的にはまだ聞いてないけど……昨晩、いきなり言われたの。急すぎだよね」


 日原さんの転校。なにが起きている?

 日原さんは、安井の人質として、安井の息がかかった教育委員会や市が管理する学校に入学させられている。彼女が学校を出て行くと、安井の監視下から外れるのではないか。もしや安井が活動場所を変えるのか。日原さんの監視役だった無常組が壊滅したから、別の監視役を用意して、その目が届く場所へ移るとか。

 先日の日原院長と安井の会食は、その打ち合わせだったのか?


 咄嗟にそんなことを考えたが、目の前の日原さんを見て、ハッとする。彼女は自身の父親と政治献金、入学の経緯なんかもなにも知らない。多分そこに理由があるのだろうが、知らない日原さんからすれば、訳も分からず突然、転校の予定を知らされたのだ。動揺して、誰かに話したくて、俺を呼んだ。でも気持ちがまとまらなくて、言い出せなかったのだろう。


「なんか、おかしいの。いろんなことが」


 日原さんがきれいな憂い顔で俯く。


「お父さん、仕事から帰ってきてもずっと険しい顔してて、電話しながら怒鳴ってるときもある。今まではそんなことなかったの。それに栄子と連絡が取れない。転校になるって話そうと思ったのに、メッセージ送っても、反応ない」


 日原院長の周辺がごたごたしているのだ。栄子、すなわち枯野さんと連絡が取れないのも、彼女が無常組の若頭の娘であり、日原さんの監視を受け持っていた立場だからだ。無常組の壊滅で事情が変わり、日原さんとコンタクトを取るのも停止させられているのかもしれない。

 でも、日原さんはそんなのは知らない。


「朝見くんは普通に連絡がついたから、なんかほっとして、泣きそうになっちゃった」


 日原さんが声を震わせる。


「さっきも話したとおり、私、朝見くんと会えて、世界が変わった。ありきたりな表現だけど、モノクロだった風景に色がついたみたいに、すごくきれいで、鮮やかで、毎日が楽しかった。転校しちゃったら、そんな日々もなくなっちゃう」


 寂しそうな彼女を見ていると、心臓の辺りがずきずきする。この表情をこれ以上見たくない。なんとか元の笑顔に戻したくて、俺は言葉を探した。


「転校しても、一生会えなくなるわけじゃない。また連絡取り合おうよ」


「そうだけど、学校で会えなくなるんだよ?」


「高校卒業したら、また同じ大学に進学するかも……あ、それはないか。地頭の良さが違う」


 上手に慰められない俺に、日原さんは、より一層しょんぼりしてしまった。


「そっか。朝見くんにはこんなの重いよね。私にとっては初めての友達でも、朝見くんからしたら、もっと他に仲のいい人がいるんだもんね」


「あ! そうじゃなくて……」


「いいの、私はいちばんじゃないの、自分で分かってる」


「やめて、修羅場みたいな雰囲気にしないで」


 周囲の視線が気になりはじめた俺に、日原さんはくすっと笑い出した。


「あははっ。ごめん、ちょっとわざと困らせた。本当は、なんて言ってもらえれば満足するのか、自分でも分かってない」


 笑っているけれど、寂しそうなのは滲み出している。


「朝見くんの言うとおりだよね。悲観したって仕方ないんだし、これからもまだ連絡取り合ってくれるっていうなら、安心してどこへでも行ける。聞いてくれてありがとう」


 日原さんは憑き物が取れたように言うと、残っていたハンバーガーに口をつけた。俺はなにか言おうとしたが、結局堂々巡りになって同じ言葉しか思いつかなかったので、黙っていた。日原さんと同じくハンバーガーを口に詰め込み、トレイを片付ける。


 日原さんは、今日、わざわざ俺に連絡を寄越してこうして会う機会を設けた。家族の不穏な動きに気づき、心細いのに、小さい頃からの友人である枯野さんと連絡が取れなくなった。そんな中こうして都合がついて、傍で話を聞いてあげられたのが俺だった。

 それなのに俺は、どうしてあげることもできなかった。彼女の不安を取り除くわけでも、心の隙間を埋めてあげられたのでもない。なんだかすごく、不甲斐ない。

 店を出ると、日原さんがスマホを見て声を上げた。


「あ、お父さんから連絡が来てた。わあ、友達の家で勉強会って嘘ついたの、バレちゃった」


 自由な外出を制限されている日原さんは、両親を納得させる理由をつけて外出する。俺は顔を顰めた。


「怒られる? 俺も謝罪に行った方がいい?」


「だめ。朝見くんと会ってたことまではバレてないだろうから、首突っ込まないで」


 釘を刺すような言い回しをされ、俺は大人しく引っ込んだ。日原さんが難しい顔で返事を打っている。


「お父さんには直接言わないで、運転手さんに口裏合わせてもらったんだけど……勉強会をする友達といえば栄子くらいだからなあ。お父さんも栄子の家と連絡つかないの、気づいたのかな」


 雇われの運転手はともかく、日原院長は無常組の壊滅を知っている。日原さんのでっちあげは通用しなかったようだ。


「早く帰って来いって言われちゃった。今、運転手さんがこっちに向かってるって」


 こうしていても、日原さんの生活の不自由さの片鱗が見える。金持ちの家に生まれ、頭も良くて、穏やかな性格と恵まれた容姿で他人からも愛される、彼女。一見、人が欲しいものをすべて手にしているように見えるのに、こんなにも生きづらそうなのだ。

 数分も待つと、駐車場に一台の高級車がやってきた。日原さんがちらっと、こちらに目をやる。


「今日は急に呼び出した上に、ごちゃごちゃの話しちゃったね。付き合ってくれてありがとう」


「ううん、俺も暇だったから」


 帰ってくるなと言われていたので、日原さんに構ってもらえてちょうどよかった。日原さんは俺に手を振って、高級車の方へと向かっていく。その背中が妙に寂しげに見えて、咄嗟に、俺は彼女の手首を掴んだ。日原さんが驚いた顔で振り向く。俺は、えっと、と言い淀んだ。


「転校のこと……俺にはどうしようもないし、また会おうねとしか言えないんだけど、これだけは否定させて」


 日原さんは黙って、俺を見上げていた。


「日原さん、俺には他にもっと仲のいい人がいるとか、いちばんじゃないとか、言ってたけど。そうだとしても、日原さんがどうでもいいわけじゃない」


 言葉が上手く、まとまらない。


「俺にとってどれだけ大事か、もっと分かっててほしかった。行動で示せてなかった俺が悪いんだけど、でも、それでも今まで、ずっと」


 ずっと、キルからの攻撃から守ろうとしてきた。キルの方が一枚も二枚も上手だったりもした。でも、そんな敵わない相手であるキルにがむしゃらに抵抗し続けてきたのは、日原さんが大事だったからだ。

 というのを、日原さんに上手く伝えられる語彙が思い浮かばない。「ずっと」の先が出なかった俺に、日原さんはにこっと笑いかけた。


「ありがとう。さっきはわざと困らせて、意地悪してごめんね」


 彼女はそって、俺の手から自身の手首を引き抜いた。


「映画の原作、本当はもう持ってるの。今度、学校に持っていくね。よかったら読んで」


 そう微笑んだ日原さんの表情は、やはりどこか寂しげで、このまま遠くへ消えてしまいそうな気がした。


 *


 日原さんと別れたあと、ゆっくりめに買い物を済ませると、三時を少し回った。今ならキルに怒られずに済む。

 俺は夕食とケーキの材料でぱんぱんになった買い物袋を提げて、自宅へ帰ってきた。家の前にトラックが停まっており、半開きの玄関のドアには、配達員らしき後ろ姿が見える。荷物を受け渡したらしき彼は、トラックに乗り込み、去っていった。配達員の制服に見覚えがある。あれはフクロウの抱きこみ業者、フクロウ便だ。暗殺者のために、普通の業者には頼めないような物品を配達する、危険な奴らだ。

 配達員と入れ違いになる形で、今度は俺がドアを開けた。と、玄関には荷物の受け取りをしていたキルがいて、大きなダンボール箱を抱えて固まっていた。俺と目が合うなり、理不尽に牙を剥く。


「帰ってくんの早い!」


「ちゃんと三時まで待っただろ! その荷物はなんだ。また妙な武器でも仕入れたのか!」


 キルから箱を没収するも、キルは素早く箱にぶら下がり、抵抗してきた。


「わあ! 違う違う! まだ開けるな!」


「危険物の持ち込み禁止! もう今更だけど!」


 邪魔してくるキルを振り払い、俺は箱のガムテープを思い切り引き剥がした。キルがあーっと叫んでいるが気にしない。箱の口を大きく開くと、箱の中にさらにまた箱が入っていた。といっても今度のはダンボールではなく、質のいい黒い紙でできた、ギフトボックスらしき箱だ。真ん中には金の箔押しで、文字が刻まれていた。


「『世界の塩セット』……?」


 そして箱の端には、小さなメッセージカードがくっついている。


『咲夜へ。ハッピーバースデー! 君の大好きなパパより』


「ミスター右崎から、サクへの誕生日プレゼントだよ」


 キルが抵抗を諦めて白状した。


「ミスターから、ムードを大事にしたいから夕食時に手渡してほしいって頼まれてたんだよ。サクが受け取っちゃわないように、受け取り場所をコンビニに指定してまひると待機してたんだが、業者の手違いで自宅に届くし、時間もずれ込むしでこんなことに」


「それでキルとまひる、朝から出かけてたのか」


 配達が遅れて到着時間が三時くらいだったから、それまでは俺に帰ってこないでほしかった、と。キルはかわいげなく舌打ちした。


「サクが来る前に届いたから、間に合ったと思ったのに……お前って奴は。この失態をミスターに叱られるのは私なんだぞ」


「なんかごめん」


「やっちまったもんは仕方ない。ミスターから電話が来たら、口裏合わせろ。無邪気に喜べ」


 腕を組んで苛立っているキルを横目に、塩セットの蓋を開ける。瓶がずらっと並んで寝そべっていて、それぞれ種類と産地を書いたラベルが撒かれている。岩塩からブレンド塩まで、十七種類。ひとつ取って裏返すと、ラベルの裏面に、その塩に適した料理が紹介されていた。見ていると料理へのモチベーションがみるみる高まってくる。


「嘘だろ……唐揚げを台無しにしたあの調味料を買ってくるような人が、こんなセンスのいいプレゼントを……?」


 いろいろ作りたくなってそわそわする俺を、キルが無言で眺めている。俺は手招きをした。


「あの、キル。これ俺から言っていいのか分からないけど……」


「世界の塩セット」の下に、もうひとつ箱がある。同じくらいの大きさだが、こちらは白っぽい箱で、メッセージカードにはキルの名前が書かれていた。


『キルへ。君の特別な記念日に。大好きなミスター右崎より』


 俺が取り出した箱を見ると、キルは目を見開いた。


「うわ! 私にもあるのか!」


 俺宛ての荷物については聞いていても、自分の分は知らなかったようだ。そういえば親父から電話があったとき、キルの欲しいものを聞かれたのだった。あのあとなにも答えていないが、親父は自分でなにか選んだらしい。

 キルは驚きながら、自分宛ての箱を開けた。中はきれいな石がついたペンダントや、繊細なデザインのブレスレット、指輪などのアクセサリーの詰め合わせだった。キルの目が輝く。


「わ……これ、欲しかったやつ」


「キル、アクセサリーに興味あったんだ」


 失礼ながら、暗殺か食かにしかスイッチが切り替わらないキルに、ファッションの趣味があったなんて想像もしていなかった。キルはペンダントを掴み、俺の目の前に翳す。


「だってほら、見て! これ、一見ただのきれいな石に見えるけど、瓶になってて中に劇薬入ってるんだぜ」


「え?」


「こっちのブレスレットは毒針が仕込まれてる。指輪は銃の照準を合わせるポインターになるやつだし」


「武器じゃねえか! 危険物の持ち込み禁止!」


 キルがアクセサリーに夢中なんて、意外すぎると思ったのだ。やはり仕事道具だ。わざわざフクロウ便を使って配送するくらいだから、まともなものではないとは思ったが。キルは頬を赤く染めて、箱を大事に抱きしめた。


「流石ミスター、分かってるなあ。ウザいとこもあるけど、やっぱかっこいい。あの人、なんやかんやでちゃんと理解してくれてるんだよな。サクも塩の詰め合わせ、結構嬉しいだろ?」


「まあ……」


 正直それは、すごく嬉しい。ピンポイントで、俺がいちばん喜ぶものを贈ってきたなとさえ思った。親父はうざったいしどうしたって好きになれないが、お礼くらいはちゃんと言おう。


「今日の夕飯は早速この塩を使い分けて、何品か作ってみるか」


 俺が塩セットの箱を持ってキッチンへ向かうと、キルは目をきらきらさせて追いかけてきた。


「やったー! ごちそうだ、ごちそうだ! ハンバーグとムニエルと竜田揚げとシュウマイとローストビーフと焼き豚とサバフライと甘酢の肉団子とロモサルタード作って!」


「多い多い。なんかたんぱく質ばっかだし。バランス考えて。そんでロモサルタードってなんだよ。そしてもう買い物済んでるからメインのメニューは決まってる。ハンバーグだ」


 なんでもよく食べるキルの、いちばん好きなメニューだ。キルは両手を振り上げて喜んだ。


「ハンバーグ!」


 飛び跳ねて歓声を上げて、それから彼女は、俺を見上げてニッと笑う。


「あと、ケーキも忘れるなよ」


 俺はキルを見下ろし、頷いた。


「それはもちろん」


 昼下がりの日差しが、キッチンの窓から差し込んでいる。ケーキ作りの支度を始めると、キルがダイニングの椅子からこちらを見つめてニマニマしていた。


 *


 それから約一時間半。ハンバーグを成形してあとは焼くだけの状態にし、ケーキも生地をオーブンに入れたところで、手持ち無沙汰になった。俺はダイニングの椅子に腰掛け、まだ俺を見ていたキルと向かい合った。


「なあキル。さっき、日原さんに会ったんだけど」


「あ!? 美月が外を出歩いてたのか!? なんだよ、殺すチャンスだったのか」


 反射で物騒な発言をするキルを制し、俺は続けた。


「ご家族に内緒で、上手いこと抜け出したみたいだったぞ」


「そういうの、私に連絡寄越せよ。あーあ、チャンスを逃した」


「だからこそ言わないんだよ」


「つうかサク。たしかに私は『時間潰して来い』とは言ったけど、そのために都合よく美月を呼んだのか。図太い奴だな」


 キルが別視点から俺を罵る。これは心外だ。


「日原さんの方から連絡してきたんだよ。そろそろ本題に入っていい?」


 キルをテキトーにあしらって、報告を開始する。


「日原さん、転校するんだって」


「ん」


 キルがふっと真顔になる。


「気になるな。あいつ、安井の監視下に置いとくために、あの学校に籍置いてるんだろ」


「そのはず。日原さんもまだ、具体的な転校先は聞いてないみたい。本当はすぐにでも動くはずだったんだけど、文化祭までは引き延ばしたって言ってた。そんなすぐにすぐ転校って、院長はかなり焦ってるっぽいよな」


「なにかが起きてるな。安井の異動か、或いは……」


 テーブルに頬杖をついて、キルは真面目な声で言った。しかしそこで一旦止めて、彼女は俺の目を見つめた。


「どこに転校するかは知らないけど、今よりセキュリティの固い学校に移られたらまずい。先生も生徒も全員、安井に雇われた古賀ちゃんみたいのだと、流石の私でも手も足も出ないな」


「そっか! じゃ、これで良かったんだ」


 俺はぱちっと、両手のひらを突き合わせた。


「今いる学校が危険地帯だから、安全な場所に移るんだ。良かった、日原さんとお別れになるのはつらいけど、日原さんがキルから守られるなら、それがいちばんだ」


 裏で手を引く陰謀だとか、個人的な別れの寂しさが先にきていたが、考えてみたら、これが最良の流れではないか。キルがよし、と拳を握る。


「ナイスアシストだ、サク。美月が転校する前に、さっさと殺すとするよ」


「おい、違う違う。そう言ってほしくて相談したんじゃない」


 俺はただ、日原院長と安井議員の間になにか起こったとしたら、なにが起きているのか、俺たちにもなにか影響があるのか、話し合いたかっただけだ。だがキルからすれば、自分のターゲットである日原さんの動きの方が重要らしい。


「さっきも言ったとおり、セキュリティが固くなったら私の仕事に支障が出る。急いだ方がいいのは明白だろ」


「やめてやめて、殺さないで。ケーキお預けでもいいのか?」


「やめてと言われても仕事だし。ケーキはどんな手を使ってでも食べる」


 相談しない方がよかっただろうか……などと今更後悔しても遅い。ひとまず俺は、少しでもキルの気を日原さんから逸らす作戦に出た。


「日原さんはもう家に帰ったから、今日は手出しできない。それより喫緊の問題なのは、今夜の仮装パーティじゃないのか?」


「そうだな。美月が転校するとなると、日原院長と安井は少なからず転機を迎えていてドタバタしてるところだろう。ここでどういった爆弾をぶつけるのがベストか、今一度、総裁と話し合っておこう」


 キルはそう言うと、ぴょんと椅子を飛び降りた。ばあちゃんがいる二階へと向かおうとして、一旦こちらを振り返る。


「サクも重大任務中である自覚を忘れないように」


「俺、なんか任されてた?」


「ケーキだよ!」


 キルがくわっと牙を見せる。命がけの攻防戦とケーキ作りは、同列の重みがあるらしい。キルは俺にそれだけ言い残して、今度こそダイニングを出て行く。彼女の白い小さな背中を見送ったあと、俺はオーブンを覗いた。まだ焼けていないケーキ生地のシルエットが、庫内に佇んでいる。キッチンからダイニングまで、香ばしい匂いが充満しはじめていた。


 *


「お兄ちゃん、キルちゃん、おめでとー!」


 夕飯時、まひるが俺とキルをまとめて祝った。ばあちゃんからも改めて言われ、親父からもわざわざ電話がかかってきた。塩のお礼を言ったら、「今すぐ日本に帰りたい」などと騒ぎはじめてやはり鬱陶しかったので、電話はすぐに切った。

 ハンバーグは、心なしかいつもよりおいしく焼けた気がする。ふっくらジューシーに焼けたそれは、箸を入れるときらきらと肉汁が溢れ出す。それがソースに混ざると、絶妙な香ばしさを孕んで口の中に広がるのだ。もしかして、塩がよかったのだろうか。キルはひと口ひと口噛み締めては、うっとりとため息をついた。


 そしてキルお待ちかね、ケーキの登場である。

 冷蔵庫に隠れていたそれを、ダイニングのテーブルへと運ぶ。途端にまひるの目が輝き、ばあちゃんが微笑ましそうに笑い、そしてキルが椅子に立ち膝をついた。


「わあああ! ついにこの瞬間を迎えた!」


 そのとき俺は、ぶわっと、体が熱くなった。そうだ、今日は「特別な日」だ。ずっと分かっていたはずなのに、そのつもりで準備して動いていたのに、今初めて、心から理解した気がした。

 お祝いの場のエキスパートであるケーキがあるから、ではない。そこにいる俺の大切な人たちが、皆が嬉しそうで、その表情が眩しかったから、だと思う。

 切り分けたケーキを前にして、キルが目を潤ませる。白い生クリームとスポンジを、同時にフォークでそっと削って、ひと口めを頬張る。


「サク」


 キルは打ち震えて、俺を真っ直ぐ見つめた。


「任務成功だ。お前、最高だよ」


 その満たされた表情を見たら、自然と頬が緩んだ。

 日原さんの背後で動く不穏な影とか、キル自身が暗殺者であることとか。今日はなんのお祝いの日だったかとか。いいことも悪いことも、今はひとまずどうでもいい。

 この瞬間、この空間の幸福に、いつまでも浸っていたかった。


 *


「おいサク……機嫌直せよ」


 皿洗いをしつつ、キルが苦笑する。その隣で食器の水気を拭き取っていた俺は、俯いたまま顔を上げられずにいた。

 ケーキ、ちょっと失敗した。

 キルもまひるもばあちゃんも絶賛してくれたし、事前の練習で焼いたスポンジほど真っ黒ではない。でも、水分が飛びすぎた。生クリームと一緒に食べれば悪くはないが、個人的にはあまり納得していない。全てを完璧な形で終わらせたかった俺は、大本命のケーキで失態を犯し、ほんのり凹んでいた。


「分かってる。素人がいきなり上手くできるわけない。食べられないほどでもなかったから、許容っていうか、上出来といっていいのかもしれないけど。でもなんていうか……いっそ大失敗すればまだ笑えたのに、微妙に惜しいのが、なんか……」


「じゃあ、納得いくまでリトライしたらいい」


 キルはニヤッと口角を上げた。


「何度でも作って、何年かかっても納得のいくものを作ればいいんだよ。そのくらい執念深くいったろーぜ」


「なるほど。さてはキル、ケーキを焼く度に味見要員として動員されるのが目的だな」


「話の早い奴は嫌いじゃないぜ」


 キルが洗った皿を俺に差し出す。俺はそれを受け取り、水気を拭き取る。こいつ、自分の都合のいいようにしれっと話を運んだな……と思いつつも、まあ、それも悪くないとも思った。きっとキルは俺がどれほど失敗しても、食べてくれるのだろう。


「俺ひとりで失敗作を処理するのはきついけど、キルがいるんならなんとかなるな」


「交渉成立」


 キルは最後の一枚の皿を洗い終えると、手を拭いてキッチンをあとにした。ダイニングを通過していくキルが、さらっと言う。


「そうと決まれば絶対生きて帰らなきゃな。これから行く仮装パーティ、以前毒盛った奴みたいなのが再び出てくるかもしんないけど、他人が何人死んでも私は生き残ってやるぜ」


 ドアを開け、ダイニングを出て行く後ろ姿が、ははっと笑った。


「今日のお夕飯は最後の晩餐でもいっかなって思えたけど、サクがまだケーキを極めるなら、ここで終わるわけにはいかないじゃんな」


「……それは本当に頼むからな」


 ぱたんと、ドアが閉まった。

 暗殺者同士の世界は、俺には分からない。でも、一般の世界を生きている俺とは、全く違った覚悟が、当たり前のようにあるのだろう、とは思う。キルの今の台詞も、自分の命を蔑ろにしているとか、諦めているとか、そういう次元ではないのだ。ごく自然に、当然のように、いつ死んでもおかしくないのを自覚している。それだけなのだ。

 そんな彼女がケーキの味見ひとつで、こんなに生にしがみついてくれるのなら、何度でも練習しようという気にもなるのだった。

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