思い出の味を出す居酒屋とそこに集う人々の物語。心が揺らいで動く。
- ★★★ Excellent!!!
短編だったものをオムニバス的に再構成した作品。そのため一話ごとに読み切り感覚で楽しむ事ができますし、二代目店主に関わる物語が大きな話の筋として流れていくため、この本筋を追えばしっかり1本の長編を読んだ満足感。
飯テロ要素も満載です。
おばけ居酒屋と噂されるのはその見た目からだろうけど、実際に幽霊や妖怪たちも集まっている、とある町の小さなオンボロ居酒屋が舞台。
妖怪たちの力のみなもとは、人の感情の起伏のエネルギー。哀しみや喜びのほか、驚いたり怖がったりすることも糧になる様子。居酒屋には人の悲喜こもごもが集うから、妖たちもそれに惹かれているのかと思いきや、ここに来る彼らの目当ては、美味しいおでんとお客が欲する【思い出の味】。
思い出になるぐらいだから、本来ならもう食べられないはずのそれ。
この思い出の味にまつわるエピソードとそれにまつわる人々、そして店の常連たちの物語が絡みあい、複雑で沁みる話になっています。
美味しさだけではない感動に、心を揺さぶられてみませんか。