今は食べることができないあの味を、もう一度食べることができたなら——。

 人は生きている間にたくさんの経験を積みます。それが嬉しいことだったり、悲しいことだったり、楽しいことだったり、辛いことだったり……。思い出となって私達の記憶に刻まれていくのですが、忘れられない一番大切なものが誰しもあるはずです。

 それが、二度と食べられない料理と共に記憶されていたら。もう一度食べたいと思いませんか?

 その願いを叶えてくれるお店があるのです。『居酒屋 源』。本作は、想い出の味を出してくれる不思議な居酒屋と、ふたりの店主に関わる人達の物語。

 時々しみじみ時々ほっこりする想い出の味にまつわるエピソードは、一話一話、一字一句じっくり味わって読んでほしいものばかり。

 居酒屋が開店する夜半に、是非お読みください。

 あなたもきっと、想い出の味を食べたくなるはず。今一番好きな味がある方は、想い出になる前に……。
 かく言う私も、想い出の味を求めて赤提灯が灯る居酒屋を探している人のひとり。

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