人は生きている間にたくさんの経験を積みます。それが嬉しいことだったり、悲しいことだったり、楽しいことだったり、辛いことだったり……。思い出となって私達の記憶に刻まれていくのですが、忘れられない一番大切なものが誰しもあるはずです。
それが、二度と食べられない料理と共に記憶されていたら。もう一度食べたいと思いませんか?
その願いを叶えてくれるお店があるのです。『居酒屋 源』。本作は、想い出の味を出してくれる不思議な居酒屋と、ふたりの店主に関わる人達の物語。
時々しみじみ時々ほっこりする想い出の味にまつわるエピソードは、一話一話、一字一句じっくり味わって読んでほしいものばかり。
居酒屋が開店する夜半に、是非お読みください。
あなたもきっと、想い出の味を食べたくなるはず。今一番好きな味がある方は、想い出になる前に……。
かく言う私も、想い出の味を求めて赤提灯が灯る居酒屋を探している人のひとり。
とある繁華街に「おばけ居酒屋」と呼ばれる古びた店がある。
そのお店やお客さんにまつわる温かいエピソードが綴られていく、連作短編形式の物語。どこから切り取って読んでも、まるで味のしみたおでんのように読者の心をじんわりと温めてくれる素敵な物語です。
居酒屋「源」というお店は、夜な夜な人や人ではないものが集まる知る人ぞ知る……というお店。古びた外観のその店は、どうやら店主一人で切り盛りしているようで——。
常連になると「思い出の味」が食べられる。
そんな噂を聞きつけて集まる人たち。思い出の味とは、もう食べられなくなった懐かしの味。多種多様なエピソードと共に綴られ提供されるそれは、豪華なものや高価な食材ではなく、誰かの心に残る……そんな味。
思い出の味を提供していた源さん、そして後半はお孫さんの大樹さんがお店に立つことになり物語が進んでいきます。
料理の温かさ、人の温かさ。それが隅々まで染み渡った物語。
こんな料理もあるんだと目を丸くする瞬間も多々あり、本当にこじんまりした居酒屋でオススメのメニューをいただいているような気分になります。
暖簾をくぐるようにページを開けば、きっとあなたもこのお話が忘れられない思い出のモノになるはずです。
地方都市の繁華街には「おばけ居酒屋」と呼ばれる料理屋がある。もう食べられなくなった「想い出の味」を食べさせてもらえるというその店に集まるのは、様々な人の思い。今日も店主は、味の染みたおでんと共に想い出の味を客に振る舞うのだ──
前半は「想い出の味」をテーマにした連作短編形式で物語が進んでいきます。「想い出の味」というのは、言い換えればもう食べられなくなってしまった味のこと。亡くなってしまった大切な人との思い出と共に提供されるお話は、まるでお出汁染みた大根のように読者の心をじんわりと温めてくれます。私も読んでいるうちに、祖父母との思い出や子供の頃の懐かしい記憶を思い出し、何度も過去の記憶に思いを馳せました。この作品には忘れてしまった大事な気持ちや記憶をそっと呼び起こしてくれる、そんな優しさがあります。
後半は代替わりをし、孫の大樹さんの物語に。元パティシエだった彼は、祖父の居酒屋を継いだものの、自分の進む道に悩み希望を見出だせないでいます。そんな彼を助けてくれるヒロイン律夏と、様々なあやかし達。後半はストーリーがメインになり、様々なエピソードを通して大樹さんが成長していく物語となっています。
それでも前半と同じく、作品に宿る温かさは健在です。
料理を通して綴られる人間ドラマと恋模様。
読了後は誰かに優しくしてあげたい、そんな気持ちになれる名作です。
お腹と心がいっぱいになりたい方、ここに良いオシナモノが揃ってます。オススメですよ!
赤提灯の灯るその店は「おばけ居酒屋」と呼ばれ、人知れず噂にはなっている、おでんのおいしいお店です。
厳つい顔の店主が作るおでんは絶品。その味に魅せられて通うのは、どうやら人間だけではないようで……。
1話ごとの短編を繋げて読んでいくタイプの長編作品。
ひとつの「思い出の味」に宿る彼らの「思い出」は、優しかったり切なかったり。そのひとつひとつは、キラキラと輝く薄く色付いた宝石のよう。
彼らの思いをのぞき見るたびに、胸がじーんとしたりほっこりしたりして情緒が不安定!というか毎回心に響きます!
何というか、昭和の人情味溢れるお話だなぁと強く感じました。
おでんのように、こころにじぃぃんと沁みるあたたかいお話です。寒い季節にはぴったり!
個人的に超絶お勧めしたいのは8話の「21回目の正直」と、16話の「バレンタインキス」です!
私こういうのホントにダメ……すき……。
あと後半の店主の淡い恋模様も好きです。
ぜひ8話まで読んで欲しい!
8話が好きなら16話もきっと好きなはず!!です!!
北の街の繁華街にひっそりと佇む居酒屋「源」。常連になると、もう食べられなくなってしまった『想い出の味』を食べさせてくれるというのですが、その料理に惹かれてやってくるのは人間ばかりではないのです。
しっかり煮込まれた大根のおでんに、梅ジャムせんべい。しみっしみのお揚げに包まれた五目稲荷。店主の源さんが作る、とにかく食べたくなってしまう美味しそうな料理の数々と、かわいい子ぎつねにほのぼのしてしまうのですが、やがて店に大きな変化が起きて——?
時に温かく、時に切ない誰かの「想い出の味」と、やがてそれをめぐる店と若者たちの、迷いや恋。さまざまな人の想いが絡み合い、妖怪たちまで紛れ込んで賑やかですが、最後はほっこりしっとり幸せな気分にさせてくれる物語です。
落ち着かないこんな日々だからこそ、この物語を通して子供の頃や恋人との「想い出」を思い出し、さまざまなことを感じる方も多いのでは?
そんなふうに感じられる、この冬、ぜひ読んでいただきたい一作です!
短編だったものをオムニバス的に再構成した作品。そのため一話ごとに読み切り感覚で楽しむ事ができますし、二代目店主に関わる物語が大きな話の筋として流れていくため、この本筋を追えばしっかり1本の長編を読んだ満足感。
飯テロ要素も満載です。
おばけ居酒屋と噂されるのはその見た目からだろうけど、実際に幽霊や妖怪たちも集まっている、とある町の小さなオンボロ居酒屋が舞台。
妖怪たちの力のみなもとは、人の感情の起伏のエネルギー。哀しみや喜びのほか、驚いたり怖がったりすることも糧になる様子。居酒屋には人の悲喜こもごもが集うから、妖たちもそれに惹かれているのかと思いきや、ここに来る彼らの目当ては、美味しいおでんとお客が欲する【思い出の味】。
思い出になるぐらいだから、本来ならもう食べられないはずのそれ。
この思い出の味にまつわるエピソードとそれにまつわる人々、そして店の常連たちの物語が絡みあい、複雑で沁みる話になっています。
美味しさだけではない感動に、心を揺さぶられてみませんか。
北国のとある場所にひっそりと建つ、「おばけ居酒屋」。
木造平屋建てで暖簾も赤ちょうちんもボロボロな、まるでお化け屋敷のようなその居酒屋には、人間だったり妖だったり死人だったりと色々な客がやって来ます。
今宵のお客さまは、ふさふさ尻尾がチャーミングなキタキツネ。丸椅子にちょこんと腰掛け、戸惑う店主に「だいこん」を注文し――。
と、ほっこりエピソードから始まるこの物語、連作短編の飯テロあやかしミステリー風味という、とても面白いテイストで描かれております。
居酒屋らしく、一番人気のメニューは出汁の染みたおでん鍋。しかしこの店の常連になると、もう食べられなくなった懐かしい『想い出の味』を提供してもらえるかもしれないという噂があるのです。その真相は――というほどには引っ張らず、どういうわけかはすぐに明らかになりますが、途中から店の事情も変化します。
その辺りから常連さんたちの解像度も上がってゆき、お店を狙う(?)怪しげな影もちらついたりなんかして……?
可愛いきつねっ子や妖艶な姐さんなどの妖たちもいます。思惑絡まる人と人外の人間模様を味わい深く鍋で煮込んだ物語。ぜひご一読ください。