世界の命運を賭けた子育て!

平凡な町娘であるフィオナは、あるとき竜卵の密猟に巻き込まれてしまう。それを颯爽と助けたのは、蒼の竜騎士団隊長であるヴィクトールだった。
しかし問題はここからだ。フィオナの手元にあった竜卵は偶然にもそのタイミングで孵ってしまい、いわゆる刷り込み効果によってフィオナを母親と認識する。さらに問題だったのは、その子竜が〈幻竜〉と呼ばれる貴重な種族であったこと。幻竜は、幸せを多く感じれば聖竜に育ち、不幸を多く感じれば暗黒竜に育つ。聖竜は国の守り神となるが、暗黒竜は世界を滅ぼす邪神となるようだ。
幸福を感じるには、幸福な家庭で育てなければならない。しかるにフィオナは独身である。ちなみに、ヴィクトールもまた独身だった。そこで、王様は言う。

「お前ら、今から夫婦な」

仮初め夫婦による世界の命運を賭けた子育てが始まった!
可愛らしい子竜ルルと、ヴィクトールの相棒である蒼竜エスターシャ。個性豊かな竜騎士団の同僚たちや紅の騎士団隊長セレグレス、ヴィクトール家の心優しい使用人たち。たくさんの人びとに見守られ、不器用な二人も徐々に心を通わせあう。
これは、仮初めの夫婦が本物の家庭を築くまでの物語。それは決して易しい道のりではないだろう。幸せの前に立ちはだかる障害は高く険しい。幻竜を育てるということは世界を相手取ることに等しいのだ。
しかし、この物語を通じてわたしたちは気づくだろう。わたしたちの日常もまた、同じだけの困難と、尊さを抱いているということに。〈平凡な幸せ〉の意義を暖かく見つめ直してくれる作品だ。

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