北海道を舞台に、鮮やかな情景で彩られた、第一級のお仕事+青春小説です。

このご作品は、純粋なお人好しだけれど空気が読めない残念イケメン家具職人の正人さんが、天使のように美しい(正人さん談、そしておそらく客観的評価)悩める女子高生・美葉さんと出会う場面から始まります。
このお二人が互いに影響し合い、時には反発し、また時には理解に苦しみつつも、人間として成長していくお話です。精緻な純文学でありながら、同時にライト層の皆様にもオススメできる、とても魅力的なご作品です。

お仕事小説としては、章ごとに一つか二つの依頼が舞い込み、正人さんが求められる課題に丹精込めたオーダーメイドで応えていくという構成なのですが…彼一人ではどうにもならない部分、主に営業や経営感覚、そして何よりもインテリア・空間デザインセンスの面で、美葉さんが見事に補ってくれます。
美葉さん、性格面も学生離れした本当にデキる女なのですが…そんな彼女にも弱い部分はあり、そこを逆に正人さんの優しさが癒し、包み込む…そんなお二人をずっと見ていたくなります。
建築・材料・色彩・産業…あらゆる知見がお客様を幸せにするため、一つのコンセプトに向かって集約していく様からは、彼らの得た達成感を物語のカタルシスとして追体験できる心地がします。

そして青春小説としても秀逸なご作品です。「雲のテーブルと俺らの居場所」は美葉さんのお友達にフォーカスし、正人さんが大きな仕事を抱えていない様子というイレギュラーなエピソードなのですが…高校生の繊細な情緒と関係性の変化を見事に描き切っておられ、この章だけでも長いレビューを一本書きたくなるほどの充実度と完成度に脱帽します。

タイトルの意味に思いを巡らせつつ、花鳥風月の美しい描写にもご注目ください。まだまだ面白さを語り尽くせません。ぜひ御一読ください!

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