美味い話には裏がある! 一口で語れない複雑怪奇をお召し上がりください!

このご作品はタイトルの通り、
「豊かな『食』の描写を読んで飯テロ食らいたい!」
「浮世に蔓延る『怪奇』の謎と脅威に慄き、その真相と深淵を味わいたい!」
「拗れた呪いを見識や考察を武器に解いていく、知性派『陰陽師』のクールな活躍が見たい!」
このいずれかに該当する方はぜひ御一読ください!

ただそれには留まらず、基本的に一話完結で本当に色々な性質のお話が盛りだくさんなので、結局のところこのレビューを目にした全ての人に対してオススメしたいです!
同じ純愛が描かれていても救いのあるものとないもの、トラブルの原因が神であるものから人であるもの、完全なギャグエピソードから容赦のない死が描かれるものまで…。

これがこうと言ってしまうとネタバレになるのでできませんが…個人的なオススメは第十八話「占いのウラ」です! 同時並行で描写される謎解きと出来事のスピード感と、吸い込まれるような伏線回収の鮮やかさたるや、もはや快感を覚えるレベル…。
と、このように、読者諸氏の性格によってお気に入りのエピソードが変わってくる、どのお皿を取っても美味しい極上のアラカルトのごときご作品かと拝察いたします! 是非ご賞味あれ!


主人公の桃子さんは現職警官であることを除けばごく普通の人…と言いたいところですが、作中人物からも作者様からも我々読者からも雑に扱われイジられ放題である、彼女の特異な人間性は特筆すべきものがありながら筆舌に尽くしがたく…とにかく面白い人というのは、読んでいただければ分かります!笑

主にストーリーを進めてくださるのは、ある日桃子さんが出会う…隠れ家カフェ風の奇妙な家に住んでおられ、酒や煙草がやたらと似合うダウナー系やさぐれ陰陽師の紡さん。
仕事のできるカッコイイお姉さんなのですが、食と怪奇を結びつけた独自理論(ただし正鵠を射ていることも多い!)を語り出すと止まらなくなる、料理以外の私生活がだらしない、口が悪い、自動運転の邪魔をする(読めば分かりますがほんとにやってるし危ない!)、実は住んでる場所自体がヤバい、等々、魅力的な欠点も沢山お持ちの方です!

そして、序盤のあるエピソードで加わる後発レギュラーメンバーの…名前を出すとネタバレになってしまうあの子が加わることで、このご作品の人物関係は(事件解決の役割分担的にも、会話を回すポジション的にも)初めて完成を迎えると言って良いでしょう!
換言すると彼女の登場以降を目安に、良さそうなエピソードを摘み食いというスタイルに切り替えてもいいと思われます。
…と言いつつやはり、フルコースとして最初から最後まで堪能していただきたい! そんなご作品です!

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